2019 Fiscal Year Research-status Report
建築基礎構造設計のための深部および浅層地盤の動的特性評価法の提案
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19K04705
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三辻 和弥 山形大学, 工学部, 教授 (90292250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 建築基礎構造 / 常時微動観測 / 小規模建築 / 深部地盤 / 浅層地盤 / 動的特性 / 地盤特性 / 山形盆地 |
Outline of Annual Research Achievements |
山形盆地における深部地盤構造の調査として、山形市西部を中心に常時微動観測を行った。既往の研究より、山形盆地は出羽丘陵が南北に走る盆地西端から中央部にかけて深部構造が深く傾斜していることが指摘されていることから、東西方向に延びる測線を5本設定し、合計77箇所での常時微動観測を実施した。各測線の長さは2~5kmであり、観測点間の距離は概ね50~300m程度である。観測結果に基づき、今年度は主に微地形区分による場所ごとの地盤振動特性の違いについて検討した。常時微動観測点のJSHISによる微地形区分は盆地内を南北に流れる須川の自然堤防、後背湿地、扇状地、砂礫質台地である。常時微動観測記録から求めたH/Vスペクトル比から観測点の卓越振動数を評価し、防災科研のJSHISによって公開されているAVS30から求められる表層地盤の卓越振動数と比較した。常時微動観測記録から評価した地盤の卓越振動数は、自然堤防では1.0-2.0Hz、後背湿地では1.0-1.5Hz、扇状地では1.0-2.0Hzに分布した。一方、AVS30による表層地盤の卓越振動数は自然堤防では2.0Hz、後背湿地では1.5Hz、扇状地では2.5Hz程度となり、常時微動観測のH/Vスペクトル比から得られた結果と比べると高めに評価される傾向となった。特に扇状地での違いが大きく、このような地盤での卓越振動数の推定には注意が必要である。 住宅など小規模建築物の宅地を想定した、浅層地盤の動的地盤評価については、2箇所の住宅建設予定地において常時微動観測を行った。いずれも敷地の面積は100~200m2程度であり、敷地内で4つのセンサーを用いて水平アレーを実施した。今年度はセンサー間の相互相関関数を求めることにより、ごく浅い地層のせん断波速度を求め、近隣の地盤ボーリングデータから推定した表層のせん断波速度と比較し、手法の妥当性を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
山形盆地の深部地盤構造が地表面や建物の振動に与える影響について、今年度はこれまでに77箇所の常時微度観測を行った。山形盆地南西部において、盆地内を南北に流れる須川を挟んで東西に横切る5つの測線に沿って地盤の卓越振動数を評価することができた。地盤の卓越振動数の盆地内の変化を測線に沿って求めた。常時微動観測から評価した地盤の卓越振動数を、防災科研JSHISによって公開されている微地形区分およびAVS30から求められる表層地盤の卓越振動数と比較した。後背湿地では常時微動観測から得られた結果とAVS30から求めた地盤の卓越振動数は概ね一致したが、自然堤防や扇状地に区分される観測点では有意な差が見られる傾向が数多く見られた。常時微動観測の結果は入手したボーリングデータから推定したせん断波速度分布から1次元重複波動伝播理論で推定した地盤の卓越振動数とも比較している。微地形区分で自然堤防や扇状地に区分される地域はAVS30の値が比較的高く設定されており、ボーリングデータとの比較からも、常時微動観測から推定した結果との差が見られた理由と考えられる。今年度はこのように山形盆地南西部の東西断面の地盤の卓越振動数の変化およびAVS30との比較による表層地盤の特性評価を行うことができた。 小規模建築物の基礎地盤を想定した浅層地盤の動的特性評価については、2箇所の住宅建設予定地において水平アレーによる常時微動観測を実施した。この観測からは、H/Vスペクトル比だけでなく、センサー間の相互相関関数を求めることにより、振動数の帯域制限された波がセンサー間を伝播する時間を評価することで、ごく浅い層のせん断波速度を評価できないか検討した。近隣の建物敷地地盤でのボーリングデータとの比較から概ね評価できる傾向は見出せた。 以上、今年度の結果から本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
深部地盤構造に関する検討については、常時微動観測を継続する。山形盆地は南北に細長い形状をしており、今年度に実施した観測点は山形市中心部の南西部に位置する。表層地盤が軟弱な地域はさらに北側の中山町や天童市、村山市などに分布しており、これらの地域での常時微動観測を詳細に展開し、山形盆地の地盤の卓越振動数分布を求める。今年度に行った常時微動観測結果の検討は、H/Vスペクトル比を基に、表層地盤の卓越振動数の変化から工学的基盤の深さや表層地盤のせん断剛性などを議論したものである。H/Vスペクトル比の結果には長周期成分の卓越も見られていることから、今後は長周期成分の考慮による深部地盤構造の検討を行う。これには過去に山形盆地で実施された断層調査結果なども参考にすることとし、資料についてはすでに入手している。また、今年度の常時微動観測は定点観測が中心であったが、深部地盤構造を検討するため、今後は水平アレー観測の実施を計画する。さらにこれまでに入手したボーリングデータの分析を進める。標準貫入試験のN値からせん断波速度の深さ方向の分布を推定し、1次元重複波動電波理論を適用して地盤の地震波増幅特性を議論することはすでに行ってきたが、これらボーリングデータから得られる結果と常時微動観測のH/Vスペクトル比から推定される結果との比較により、建物の杭基礎支持地盤よりも深い層の動的特性が地表面の振動特性に影響している可能性について検討を行う。 浅層地盤の検討については、今年度の常時微動観測データにSPAC法などの手法を適用するほか、センサー間のデータの相関についてさらに詳細に検討し、ごく浅い地層の波動伝播特性を抽出する手法の開発について議論する。また他の実測データとの比較として観測した敷地でのスウェーデン式サウンディング調査結果の入手を検討している。
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Causes of Carryover |
実験装置の一部の導入を先に行ったところ、当初、購入を予定していた地震計の販売価格が上昇したこともあり、今年度予算の範囲を超えることが予想されたたため、購入する地震計を再検討した。再検討した地震計については比較的安価なものを複数導入する予定であるが、海外製品ということもあり、年度末のコロナウイルスの影響などから導入が拙速になることを避け、次年度に購入する再計画を立てた。次年度については、地震計販売会社の動向を見ながら、段階的に導入することを検討している。本来、次年度に計画していた実験にかかわる費用については予定通り、実験冶具の製作費や実験用の消耗品などを中心に計画している。
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Research Products
(2 results)