2020 Fiscal Year Research-status Report
建築基礎構造設計のための深部および浅層地盤の動的特性評価法の提案
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19K04705
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三辻 和弥 山形大学, 工学部, 教授 (90292250)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 建築基礎構造 / 常時微動観測 / 小規模建築 / 深部地盤 / 浅層地盤 / 動的特性 / 地盤特性 / 盆地構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き、山形盆地における深部地盤構造の調査として、盆地北部の村山市、東根市、河北町、寒河江市、中山町、さらに置賜地方の米沢市において地盤の常時微動観測を行った。今回観測を行った各サイトのH/Vスペクトル比からは、村山市で1.0Hz付近、中山町で1.0Hz弱、東根市西部と河北町で1.0Hz強、東根市東部や米沢市で2.0Hzに表層地盤の卓越振動数と考えられるピークが見られた。一方、寒河江市の観測点では表層地盤の特性を表すような明瞭なピークは見られなかったが、深部地盤の影響を表すピークが0.4-0.5Hzに見られた。 米沢市の観測点では、6階建ておよび4階建ての2棟のRC建物について、地盤と建物最下階・最上階の3点で常時微動観測を行った。6階建て建物では上部構造の固有振動数が敷地地盤の固有振動数2.0Hzに近いために共振現象を起こす可能性が指摘された。4階建て建物では固有振動数が敷地地盤よりも高振動数側にあるため、動的相互作用効果が現れることが確認できた。深部地盤構造の影響については0.5-0.6Hzにピークが見られているが、詳細については今後、さらに検討を進めたい。 新たな地震観測として、仙台市内のRC造5階建て杭基礎建物の1階および5階に地震計を設置し、2021年3月20日宮城県沖を震源とする地震による強震記録を取得した。上部構造の固有振動数は、常時微動観測から得られる3.5Hzに比べると2.2Hz程度にまで低下していることを確認した。周辺の自由地盤での地震記録と比較して詳細な検討を行い、表層地盤の影響、深部地盤構造の影響などについて検討を行う。 浅層地盤の動的地盤評価については、山形市内の木造3階建て事務所建物において実施している連続観測記録の分析を行い、動的相互作用の影響と思われる入力損失について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は山形盆地南西部を中心に地盤の常時微動観測を行った。今年度は盆地北部の村山市や中山町など軟弱地盤として知られる地域においても地盤の常時微動観測を実施した。山形盆地は南北方向に細長く、東西方向に地盤特性が変化するため、村山市、東根市、河北町、中山町、寒河江市での観測により、表層地盤の振動特性の変化を確認することができた。ただし今年度の観測点数は多くないため、今後、観測点数を増やして高密度な常時微動観測を実施し、表層地盤特性の場所による変化について詳細に検討するとともに、深部地盤構造の影響を表す低振動数帯での地盤振動の増幅について考察する必要がある。 2021年2月13日に福島県沖地震が発生したこともあり、福島盆地でも地盤の常時微動観測および強震記録の分析による盆地内の地震波伝播特性の検討を開始した。工学的基盤に近いと思われる盆地端部と表層地盤の影響を受ける盆地中央部での振幅比を、常時微動観測記録と強震観測記録のそれぞれについて検討し、卓越振動数が概ね一致する傾向が見られたほか、深部地盤構造の影響が現れていることを確認した。同様な検討方法を山形盆地においても適用することができると考えている。 山形市内の木造3階建て事務所建物において以前より実施していた連続観測記録について、常時微動観測および強震観測記録を用いて、浅層地盤の動的地盤評価の立場から分析を行った。特に強震観測記録からは、この建物に近いKiK-net観測点での強震観測記録と比較すると、建物1階の観測記録は小さくなる傾向が見られ、動的相互作用による入力損失が現れていることが示唆された。本建物は直接基礎で支持されており、上部構造のロッキング振動や基礎と地盤のすべりによる影響の検討を開始した。 以上、今年度の結果から本研究は概ね順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
深部地盤構造に関する検討について、今年度、山形盆地北部での常時微動観測を開始したが、村山市、東根市、天童市、河北町、中山町、寒河江市の各所において高密度な常時微動観測を行う。2019年度山形市内西部で実施したように、盆地北部において東西側線を設定して、東西方向の地盤振動特性の変化について明らかにする。さらに今年度は水平アレー観測を実施するとともに、ボーリングデータから推定される表層および深部地盤の理論的な振動特性との比較を行う。2020年度には福島盆地においても常時微動観測を実施しており、今後は福島盆地においても高密度な常時微動観測を行うことを計画している。また、K-NETやKiK-net観測点における強震記録を利用して、工学的基盤に近いと考えられる盆地端部の観測点と表層地盤の影響を受ける盆地中央部の観測点での観測記録を比較して表層地盤の振動特性や深部地盤構造の影響について、検討を行う。福島盆地についてはすでに検討を開始しており、山形盆地においても同様な手法で盆地北部から南部にかけて、地震波の到来方向を考慮しながら、特に東西方向の波動伝播特性を中心に検討する。 浅層地盤の検討については、新たに小規模建築建築の敷地における常時微動観測を実施する。スウェーデン式サウンディング試験で実施する程度か、あるいはそれよりも多い程度の数の観測点を敷地内に設定し、観測点間の相関を求めることで、浅層地盤の動的特性を週出することを試みる。また以前から実施している木造3階建て事務所建築での常時微動観測および強震観測記録を用いて動的相互作用による入力損失の影響を検討する。常時微動観測は新たに動的相互作用を考慮した観測点配置で実施し、強震観測記録については周辺のKiK-net観測点の記録と比較することで、入力損失の影響を定量的に評価することを試みる。
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Causes of Carryover |
昨年度の状況から、再検討した地震計の購入について、観測サイトでのセンサー管理や電源供給方法の問題から、当初予定していた機種よりも廉価なネットワークセンサーを導入することとしたため、当該助成金が生じた。導入台数を増やす計画も検討したが、導入したセンサーの実際の観測サイトでの性能確認や、ネットワークセンサーであるため、導入台数を増やすと通信費が増加することが予想されたため、最適な導入台数の算出を慎重に行うこととし、計画中の実験冶具の製作費や実験用の消耗品とあわせて次年度に使用することとした。
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