2021 Fiscal Year Research-status Report
地震応答低減及び損傷修復性により建物の長寿命化を目指した鋼構造柱脚部システム
Project/Area Number |
19K04707
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
井上 圭一 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70333630)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 制振構造 / 地震応答 / 柱脚 / 振動実験 / 画像解析 / 載荷実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、建物の長寿命化を目指すために、柱脚に浮き上がりを許容しダンパーを設けることにより建物に生じる地震応答を低減し、柱脚部が損傷を受けた場合には容易に交換できるシステムを提案し、構造特性を明らかにすることである。 2021年度の研究は2つの方向がある。1点目は、前年度に実施した試験体の載荷実験を参考にして、柱脚浮き上がりを許容した柱脚部の荷重変形関係に関しての解析的な検討である。FEM解析によって、パラメトリックな解析が可能になれば、研究開発には大きなメリットとなる。柱試験体に水平力を作用させることにより、柱脚ベースプレートが浮き上がり及び着地を繰り返しながら、アンカーボルトが降伏していくような実験であることを踏まえ、ベースプレートと基礎コンクリートの要素間に接合要素を仮定し、解析精度を高めることを試みた。接合要素の特性を適切に仮定することにより、初期剛性及び降伏耐力は実験結果及び計算式との対応をよくすることができることを示した。 2点目は、地震応答性状を検証するために、柱脚浮き上がりに伴う上部構造の回転慣性が振動性状に及ぼす影響について解析的に検討を行った。つまり、浮き上がり回転運動の支点となる柱脚の間隔と建物の幅が異なる場合の振動性状について、6層建物解析モデルの自由振動解析の結果によって考察を行った。浮き上がり時の振動に影響が大きいと考えられる、上部構造の変形と柱脚浮き上がりに伴う上部構造の変位が逆位相になる振動モードの固有周期に及ぼす回転慣性の影響が大きいことを示した。また、そのほかの高次の振動モードにはほぼ影響がないことを示した。振動性状の問題からは、柱脚幅が建物幅よりも狭い場合に地震応答低減効果がある可能性について明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、FEM解析による検討を行い、水平荷重に対しての剛性、耐力についての再現、課題は残されるが、解析精度の向上について示すことができた。 これらの結果も踏まえながら、地震応答解析による建物の振動性状及び地震応答低減効果の検証、縮小模型実験による振動実験による振動性状に関しての検証が必要であると考えている。 2021年度に振動実験の実施を計画していたが、振動実験装置の不調などにより振動実験を行うことができなかったので、2022年度に継続して実施する予定である。振動実験を延期した代わりに、建物の回転慣性の影響を踏まえ適用範囲を広げた建物の振動解析を実施し、柱脚浮き上がり時の振動性状に及ぼす建物幅と柱脚幅の影響について考察を行った。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
柱脚部の構造特性をパラメータとした縮小模型による振動実験を行い、画像解析によって、振動性状を解明し、柱脚部の特性が振動性状に及ぼす影響について分析、検証する。 モデル建物を設定し、柱脚部や建物上部の構造特性を種々パラメータとして地震応答解析を実施し、地震応答性状及び浮き上がりを許容することによる地震応答低減効果についての分析を深める。 エネルギー吸収、大地震による損傷後の修復、柱脚の拘束条件などを踏まえて、実用化につなげられるように、柱脚システムのディテールについて検討する。 そのために、振動模型についてもパラメータを設定し、種々の入力地震動を用いた振動実験を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
当初、実施予定であった振動模型実験について、振動実験を行うための振動台が老朽化している影響もあり不調となってしまい、実施できなかった。簡易的な補修を行い、2021年度に振動実験を実施する予定である。 建物の振動模型の部品の材料費・製作費として使用する予定である。
|