2020 Fiscal Year Research-status Report
連棟配置された建築構造物群に作用する津波荷重の解明
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19K04713
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小幡 昭彦 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (30433147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 尚史 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00315631)
佐藤 公亮 三重大学, 建築学専攻, 准教授 (50788510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 津波荷重 / 連棟配置 / 津波圧力 / 水理実験 / 数値流体解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、連棟配置された建築構造物に作用する津波荷重の解明である。先の震災の調査において,津波被害は建物の構造強度のみならず,建物の形状,配置計画,周辺環境に大きく影響を受けることが明らかとなっている。すなわち,配置計画,周辺環境などを見直すことによって津波荷重を大幅に軽減することができ,被害低減に結び付けることができると考えられる。本建築学会の「建築物荷重指針・同解説(2015)」に示されている波圧分布の評価方法は,それまでの水理実験結果などと比較しても,構造物前面の浸水深と流速を用い合理的に波力を計算できる方法となっているといえる。しかし,一方で荷重指針においては,対象とする建築構造物が連棟となった場合に対応する考え方は示されておらず,設計ではそれぞれ単体での設計方法を適応することになると考えられる。そのような問題について本研究では,水理実験並びに数値流体解析(CFD)により,建物群に作用する津波波圧・波力の特性を明らかにするとともに,合理的な対津波設計を確立する上での基礎的知見を得ることを目的とする。 令和2年度は新型コロナウィルス感染防止の観点から計画されていた水理実験を延期し,令和元年度に行った水理実験について実験結果の分析,および数値流体解析によるパラメトリックスタディを中心に行った。この研究では,対象とする建物を2体とし,水上に設置する構造物をダミー構造物,水下側に設置される構造物は計測器等を設置する計測対象構造物としている。津波の流れに対して計測対象構造物がダミー構造物の背面に位置する場合において,津波力は単棟だった場合と比べて小さくなり,計測対象構造物がダミー構造物と並列する場合には津波力が単棟だった場合と比べて大きくなることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は新型コロナウィルス感染防止の観点から計画されていた水理実験を延期し,令和元年度に行った水理実験について実験結果の分析,および数値流体解析によるパラメトリックスタディを中心に行った。 この研究では,対象とする建物を2体とし,水上に設置する構造物をダミー構造物,水下側に設置される構造物は計測器等を設置する計測対象構造物としている。水理実験結果の分析および数値流体解析によるパラメトリックスタディは,計測対象構造物とダミー構造物の建物配置について中心に整理を行った。 津波の流れに対して計測対象構造物がダミー構造物の背面に位置する場合において,津波力は単棟だった場合と比べて小さくなる。これはダミー構造物により津波流れが阻害されることによるもので,シールド効果と位置付けられる。この効果の定量的分析は,数値流体解析により津波流れの局所的な変化を追うことでより詳しく確認する必要がある。一方で,計測対象構造物がダミー構造物と横並びになった場合には津波力が単棟だった場合と比べて大きくなることが確認された。これは単棟と比べて横並びになった場合には進行する波を堰き止める効果があることによるものと推測される。堰き止め効果と位置付ける。このシールド効果,堰き止め効果は,計測対象構造物とダミー構造物の位置関係が津波の入射角度に対して45度となったときに移り変わることが確認された。これにより連棟配置された建築構造物群に作用する津波荷重について,建物配置よる荷重増減効果が確認された。 以上より、現在までの研究の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は令和2年度に行えなかった水路実験を行う。令和元年度は対象とする建物件数を2体と絞っていたが,建物数を3体,4体まで増やす。配置計画について,建築構造物群の配置計画は無限に存在するため,遮蔽となる場合,水の通り道が存在する場合などの代表的なケースを想定した実験を行う予定である。同時に数値流体解析によるパラメトリックスタディを3体,4体のケースで行い,建物群の中での津波の流れ,建物に作用する波力,波圧の性状把握を目的とする。 また,水上に設置する構造物の後方流れ場に関連する考察を行う。津波の流れに対して計測対象構造物がダミー構造物の背面に位置する場合においては津波力が単棟だった場合と比べて小さくなることがこれまでの実験,解析で確認されている。このことについて,ダミー構造物により津波の流れが阻害され,計測対象構造物に差し掛かる流量が局所的に小さくなっていることに起因すると考えられる。この状態での波力の定量的な評価は構造物の後方流れ場の状態を確認し行う必要がある。
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