2022 Fiscal Year Research-status Report
伝統木造町家建築の連棟効果の解明と耐震設計法の提案
Project/Area Number |
19K04718
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 弘美 金沢工業大学, 建築学部, 講師 (60508274)
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Project Period (FY) |
2019-03-01 – 2024-03-31
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Keywords | 町家建築 / 連棟効果 / 常時微動測定 / 地震観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は歴史的なまちなみに多くみられる連棟建物の構造的効果を定量的に明らかにすることを目的とする。 現行の建築基準法は建物の構造性能は単体で構造性能を検討する。しかし平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震や平成28年(2016年)熊本地震など過去の巨大地震では、耐震要素の少ない町家建築が隣接する建物と支えあうような事例が散見された。このことから、個々の建物が地震に対する構造性能を十分保有していなくても、隣接する建物と一体化することで隣接する建物と耐力を補完しあうこと、一体化していなくても倒壊しかけても寄りかかり倒壊を免れることが可能性として考えられる。この特性を分析・評価することは、まちなみを維持しながら多くの伝統木造建築を耐震化することにつながる。本研究では、町家型伝統木造建築の構造性能評価の考え方を新たにし、連棟建物の効果を定量的に明らかにすることおよび連棟効果を考慮した耐震性能の評価法および耐震設計法を提案することを目的とする。 はじめに連棟効果が得られる隣接条件の抽出と分布を調査し連棟効果の条件の定量化を行う。また実在の連棟町家建築を対象とした振動実験により隣接する建築物へ与える影響を明らかにする。これまで、既存の調査データと実地域の古いまちなみを対象とした全数調査を基に隣接条件の分析を行った。また、石川県金沢市、富山県高岡市の古いまちなみの残る地域にて、連棟町家建築を対象に地震応答解析を行った。 2022年度は上記対象地域の連棟町家建築を対象に,常時微動測定や地震観測などを実施し、実挙動の把握を試みた。計算や解析などの推定値を含む評価だけではなく、実建物の実際の挙動を測定することで、連棟という特殊な状態の解明によりつながるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、①連棟効果が得られる条件を定量化するための調査、②実在の連棟町家建築を対象とした現地での振動実験、③縮小模型を使った振動台実験および地震応答解析を行うよう計画を立てている。当初の計画と順序等は多少異なるものの、①連棟効果が得られる条件を定量化するための調査を石川県金沢市、富山県高岡市の2か所で実施できていること、③地震応答解析を実施できていたこと、また昨年度に振動実験と地震観測を実施し微小地震時の挙動を把握することができていることから、進捗状況はおおむね想定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に実施した2021年度に実施した②実在の連棟町家建築を対象とした現地での振動実験および地震観測で得られた連棟町家の実際の挙動を整理し、①連棟効果が得られる条件と③振動実験および地震応答解析の結果とひもづけて連棟による構造的効果の定量的評価につなげることを目指す。また、この定量的評価を基に効果的な耐震設計法を提案することを目指す。
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Causes of Carryover |
振動調査を地震計設置に計画変更したことなどにより、予算計画に変更が生じたため次年度使用額が生じた。追加の振動調査や研究成果の発表などに使用する予定である。
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