2020 Fiscal Year Research-status Report
繰返し負荷による破壊靱性低下の影響を考慮した溶接接合部の脆性破壊評価
Project/Area Number |
19K04721
|
Research Institution | Ariake National College of Technology |
Principal Investigator |
岩下 勉 有明工業高等専門学校, 創造工学科, 教授 (10332090)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 康二 崇城大学, 工学部, 教授 (80320414)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 脆性破壊 / 破壊靱性 / 繰返し負荷 / ワイブル応力 / 破断サイクル数 / 累積疲労損傷度 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,複数の材料靱性において切欠き付鋼試験片の繰返し載荷による破壊実験および有限要素解析によって得られるワイブル応力等の脆性破壊評価のクライテリアと破断サイクル数の関係を定量化することを目的としている.さらにその結果を利用して,溶接接合部の脆性破壊評価の有効性を明らかにする. 2020年度は,計画の通り,これまで実施済みの2種類の材料(低靱性,中靱性)に加えて,高靱性材において,切欠きを有する鋼試験片の繰返し載荷破壊実験を実施した.特に本年度は,低・中・高靱性の3種類の材料それぞれにおいて異なる温度で,すなわち,「包括的靱性レベル」での繰返し実験を行った.これにより,単一の試験片ではあるものの,シャルピー衝撃値と累積塑性変形能力の関係を定性的に評価することができた.加えて,材料靱性の指標にもなる脆性破面率により延性破壊と脆性破壊の境界(脆性破面率 = 約20 %)を把握することができた.また,仮定した限界ワイブル応力を用いて,異なる温度(破壊靱性)で実験した試験体の変形能力を推定した結果,大半の試験片において20%の誤差範囲で脆性破壊時の累積塑性変形能力を推定することができた. 得られた研究成果を踏まえて,溶接接合部から発生する脆性破壊予測手法の有効性を明らかにすることを目的に,過去の実大溶接継手モデル試験体の一部に対して,有限要素解析により実験を再現するとともに,欠陥先端の応力状態を確認した.その上で,本研究で提案する累積塑性変形能力推定手法を,これら欠陥を有する試験体に適用した.その結果,一部で予測結果と実験結果にばらつきがみられたものの,本手法が有効である可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に関しては,2020年度の計画の通り,高靱性材料を入手するとともに試験片製作,実験を行った.また,新規材料であることが,素材試験やシャルピー衝撃試験等も実施し,材料の機械的性質・靱性等のデータを得ることができた.切欠きを有する鋼試験片の繰返し破壊実験に関しては,温度を変数として実験を実施したが,新型コロナウイルス感染症の影響もあり,本来予定していたワイブル応力と破断サイクル数の関係を定量化のための繰返し振幅を変数とした実験が十分にできなかった. 一方で,当初2021年度に予定していた欠陥を溶接継手試験体から発生する脆性破壊予測の検討を前倒しで一部実施した.一部ではあるものの,過去の実大溶接継手試験体実験結果に対して有限要素解析を行うとともに,本研究で提案する累積塑性変形能力推定手法をこれらの試験体に適用するところまで実施した. 前述の通り,実験では予定通りに進まなかった部分もあるが,解析面・変形能力推定手法において一部前倒しして研究を進めることができた.加えて,2019年度に得られた結果に関して,成果公表を行うとともに,2020年度の結果に関しても,査読論文投稿を行った.以上から,本年度の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と総合的に判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】で述べた通り,2020年度において,実験では予定通りに進まなかった部分もあるが,解析面・変形能力推定手法では一部前倒しができた.よって,2021年度は,実験の不足分を実施するとともに,解析を継続し,溶接接合部から発生する脆性破壊時の変形能力推定手法の有効性を示し,最終年度を締めくくる予定である. 実験では,高靱性鋼の切欠き付き試験片に関して,繰返し振幅を変数とした破壊実験を実施する.得られた結果をすでに実施済みの低・中靱性の結果と統合し,ワイブル応力と破断サイクル数の関係を定量化する.これにより累積塑性変形能力推定手法を確立し,その手法を過去の実大溶接継手試験体実験結果に適用する.2020年度は4体程度の試験体に対して検討・検証をおこなったが,2021年度はそれを10体程度までに増やし,提案手法の有効性を示す予定である. 新型コロナウイルス感染症の影響により研究がうまく進まない状況もあり得るが,2020年度の経験を生かし,学生の登校できないような状況でも研究が進められるよう,また,実験に関しては,技術職員の協力を得ながら進める予定である.
|
Causes of Carryover |
当初2020年度予定していた出張(学会発表)が新型コロナウイルスの影響によりなくなったこと,一部実験ができなかったこと,また,前年にも記載した試験片製作コストの低減等により残額が生じた.2021年度も当初計画していた国際会議が開催されないため,さらなる解析環境の向上や研究環境の向上のため,高性能パソコン等を購入する予定である.
|
Research Products
(5 results)