2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の夜間運転の安全を高める環境順応・個人適応型コントラスト向上照明技術の構築
Project/Area Number |
19K04724
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
明石 行生 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (10456436)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 輝度コントラスト / 高齢者 / 周辺視 / コントラスト感度 / 順応輝度 / 視標検出 / 提示位置 / ADB |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、「周辺視の視標検出モデル」を開発するためのデータベースの構築のために、2つの実験を行った。 実験1:データベース構築のために、順応輝度と視標の輝度コントラストが異なる条件下で視標の検出実験を行った。実験1のために、コンピュータ、ディスプレイ、キーボード、中心視作業提示装置から構成する実験装置を作った。中心視作業提示装置は、自車を車線の中に維持するトラッキング作業を模擬した。独立変数を視標の提示位置、視標の輝度コントラスト、順応輝度とし、従属変数を視標の検出率とした。視標は、視線中心から水平線上に右方向に、偏心角10度、15度、20度の位置に提示した。輝度コントラストは、検出率の50~80パーセンタイル値を求めるのに十分な範囲を準備した。背景輝度は0.1~1.0cd/㎡の3条件とした。被験者は、中心視作業を行いながら、ディスプレイの周辺視野に提示される視標を検出した。 実験2:順応輝度算定アルゴリズム開発に向けて複雑な輝度分布の条件下で運転者の順応輝度を求めるために、グレア光源を伴う視標検出実験を行った。実験2のために、視標提示板、照射光源、2台の対向車のヘッドライト(以降、HLと略す)、コンピュータ、スイッチから構成される実験装置を作成した。視標は70 m 遠方の路肩の歩行者を想定し、照射光源から視標提示板に照射する直径0.4度の円形のスポット光とした。1台目のHLは15m遠方、2台目のHLは110m遠方に位置する乗用車のロービームを想定した。このレイアウトは、事故が多い「対向車線の2台の対向車の間の路肩に立つ歩行者が道路を横断しようとする状況」を想定した。実験では、被験者は、視野中心に提示された数字を読み、前後2つの数字を合計しながら、周辺視で視標を検出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は、「周辺視の視標検出モデル」を開発するためのデータベースの構築のために、2つの実験を行った。 研究実績の概要に示した実験1について、まず、若年者を被験者として実施し、その実験データに基づいて「周辺視の視標検出モデル」の構築を試みた。しかし、若年者の被験者数は十分ではないうえ、年度末に予定していた高齢者を対象とした実験がCovid-19対策のために実施できなかった。このため、進捗は遅れている。 研究実績の概要に示した実験2については、計画通り順調に推進した。視標の提示位置とグレア光源の位置との相互の関係により、グレア光源が生じる光幕が視標の検出率に及ぼす影響が異なることを明らかにした。また、グレア光源については、雨天時を想定して路面で反射する光をグレアと市街地に存在する看板を含む種々の照明をグレア光源として加えて実験を行った。このように、夜間道路で運転者が遭遇する種々のグレア光源に対して、運転者の視標の検出率に関するデータベースを構築した。実験1により「周辺視の視標検出モデル」が構築できれば、種々のグレア光源が生じる光幕を予測する順応輝度算出アルゴリズムの開発のための準備が整う。 以上から、実験2は計画通り推移したが、実験1が遅れているために、全体としては、やや遅れている進捗となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を遂行する上での課題は、これからのCovid-19の影響を予測できないことである。仮に、2020年度の夏ごろには、高齢者にも安心して実験に参加していただくことが可能になるとすると、「周辺視の視標検出モデル」を構築するのに十分な数の被験者からデータが得られると考える。そのため、7月頃から十分な安全対策を取ったうえで、計画よりは少ない被験者数になるかもしれないが、実験を再開する。 また、2021年度には、実証実験を行う計画であるため、被験者実験が実施できない状態が続く場合は、2021年度の実証実験の準備を前倒して始めることにより、3年間の研究を計画通り終えることができると考える。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響で高齢者の被験者を実験に参加いただくことができなくなったために、一部の実験の実施を次年度に行う必要が生じた。
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