2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の夜間運転の安全を高める環境順応・個人適応型コントラスト向上照明技術の構築
Project/Area Number |
19K04724
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
明石 行生 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (10456436)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 薄明視 / 高齢者 / 視覚特性 / 減能グレア / 光幕輝度 / コントラスト感度 / 周辺視 / 中心視 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.周辺視の視標検出モデルの開発 周辺視において視対象の検出が可能となる順応輝度と輝度コントラストの要件を示す、「周辺視の視標検出モデル」を構築することを目的として、①視標の位置、②輝度コントラスト、③順応輝度が種々異なる条件をコンピュータディスプレイ上に提示して、周辺視における視標検出実験を行った。これまでの実験条件に関する課題を解決したうえで、若齢者と高齢者とが同じ実験条件下で評価できるように、今回改めて統一した条件下で実験を行った。被験者は、目に疾患のない本学の学生9名(23~27歳)と、高齢者9名(62~65歳)の協力を得た。 実験結果より、各視環境条件(順応輝度×提示位置)に対する検出率を算出した。検出率データを若齢者と高齢者グループに分け、視標の輝度コントラストに対する検出率を回帰分析し、85パーセンタイル値(輝度コントラスト)を算出した。これらの値を基に、観測者の視野上に輝度コントラストの85パーセンタイル値を等高線として表現した、視標検出モデルを構築した。このモデルより、周辺視による視標検出に対する偏心率、方位角、順応輝度、年齢の影響が読み取れる。 2.順応輝度算出アルゴリズム開発 これまで若齢者と高齢者を対象に行ってきた実験結果に基づいて、周辺視の光幕輝度モデルを作成した。これらの実験では、被験者の視野の周辺部にグレア光源を提示した時に、周辺視野に提示した視標の閾値コントラストを求めるものであった。実験結果から周辺視野に提示したグレア光源が被験者の視野に生じる光幕の輝度分布を求め、そこから、光幕輝度算出のモデル式を求めた。このモデル式の年齢差を調べた結果、高齢者は若齢者に比べて約10倍の光幕輝度になることが明らかになった。ただし、高齢者は白内障の進行の影響により実験結果の個人差が大きいことも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は、2020年度末に引き続き、Covid-19の感染拡大のために、特に高齢者の被験者を集めるのが困難であった。また、高齢の被験者を学生に接触させないように対策しながら実験を行う必要があったために、効率的な実験の実施はできなかった。そのため、今年度は、慎重に感染対策をしながら、周辺視野のコントラスト感度の分布を調べる実験に注力した。屋外での実証実験については、来年度行うことにして、そのために、研究の延長申請を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年間研究機関を延長していただいたので、2022年度には実証実験を行う計画である。これまでの実験に基づいて決定した輝度コントラスト向上の効果を夜間屋外で運転者が周辺視野に提示された視標を検出する実証実験する。 具体的には、夜間、大学の駐車場などの安全な場所において、幅員7m程度の対向2車線の道路を設定する。実験は、「対向車線の2台の対向車の間の路肩に立つ歩行者が道路を横断しようとする状況」を想定する。実験装置は、乗用車(自車)、中心視標提示装置、周辺視標、視標の照射光源、対向車HL(2台)、コンピュータ、スイッチから構成する。周辺視標は、70 m遠方の路肩の歩行者を想定し、高さ1.2mの位置に直径0.5mの円形視標を提示する。視標は、輝度コントラストを5段階に変化させる。1台目HLは15m遠方、2台目HLは110m遠方にHLを設置し、ロービームとハイビームを切り換えられるようにする。実験では、上述した周辺視標の輝度コントラスト、対応車HLのON/OFFとビームの切り替えとする。被験者は、自車の運転席に座り、中心視標に提示される、1秒ごとに変化する0から9の数字を読み、周辺視標を検出する。その際、対応車のヘッドライトの条件が異なる。 この実証実験の実験条件の範囲は、これまで開発してきた周辺視野の輝度コントラスト感度モデルに基づいて決定する。実証実験の結果から、モデルの妥当性を検証する。
|
Causes of Carryover |
2021年度は、2020年度末に引き続き、Covid-19の感染拡大のために、特に高齢者の被験者を集めるのが困難であった。また、高齢の被験者を学生に接触させないように対策しながら実験を行う必要があったために、効率的な実験の実施はできなかったため、周辺視の視標検出モデルの実験を集中的に行った。実施を予定していた、屋外で行う実証実験ができたかったため、進捗は遅れているために、次年度使用額が生じた。1年間の延長申請を行ったので、2022年度に遅れていた実証実験を行う計画である。
|