2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K04742
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
穴井 謙 福岡大学, 工学部, 教授 (10325467)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒートポンプ給湯機 / アクティブ騒音制御 / 低周波音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は設備機器の開口部から放出される中低周波音を制御し,遮音する技術の提案を目指している。主な検討対象は,一般的に大きな(直径およそ400 mmの)開口部を有するヒートポンプ給湯機(以降,HPユニット)と考えており,その開口部に近接して制御用スピーカーを配してアクティブ騒音制御を行うことで,音響放射を低減させるものである。 本年度は,前年度の実物大模型実験の結果を踏まえ,ダイポールによる音響放射パワーの低減原理が有効に働く条件を整理するために,FDTD法を用いた数値シミュレーションを実施した。騒音源と制御スピーカーの距離や制御音源の数と,制御効果の関係を把握することで,実用の際の制御システムの構築に役立つと考えられる。ただし,音場は自由空間とし,アクティブ制御の効果が最大に得られるように配慮した検討を行った。なお,現実のように反射面が存在する空間を想定した現象把握は次のステップで実施する。 検討の結果,騒音の波長を lambda とすると,制御スピーカーが1本の場合には,騒音源から lambda/8 の距離まで制御スピーカーを近づけることで,逆効果を生じさせることなく空間全体の騒音を抑制でき,騒音源と制御スピーカーの垂線方向には26 dBの効果を得られることが明らかになった。また,3本の制御スピーカーを用いて総音源を取り囲んだ場合は,スピーカーの距離が lambda/4 でも空間全体の騒音を抑制できるものの,制御効果は 6 dBから13 dBに留まることも把握できた。なお,この制御スピーカー3本の効果は,前年度に実施した模型実験の結果とも整合性が取れていた。 引き続き,設備騒音のアクティブ騒音制御技術の実用のために,数値シミュレーションと実物大模型実験を行い,現実的な範囲でより大きな制御効果が得られるように制御システムを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値シミュレーションに必要な高性能コンピュータを2020年秋季に導入し,シミュレーションプログラムの基幹部のコーディングを完了している。そして,残響室と無響室の間にHPユニットの開口部を模擬した実物大模型を製作し,また,実物大の模型実験で使用する低周波音発生用のウーハーも製作してアクティブ制御実験の準備を整えるなど,当初の計画におおむね沿って研究を実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,音場の可視化により精緻な考察を行うための数値シミュレーションと,アクティブ騒音制御によって現実空間で生じる音響現象を捉えるための実物大模型実験を併用して研究を推進していく計画である。実験およびシミュレーションに必要な物品や計算資源を,今後も研究進捗を鑑みて適切なタイミングで確保(購入)しながら,研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表等のために外国旅費および国内旅費を計上していたが,コロナ禍で国内外のすべての学会が中止あるいはオンライン開催,または次年度に延期となったため,旅費分の研究費を次年度に使用することにした。ただし,国内外の学会は引き続きオンラインやバーチャル開催を予定しているものが大多数であるため,旅費としての使用ではなく,実験に使用する機材の修理や追加購入や,数値シミュレーションのための計算資源の拡張等のための物品購入に使用する計画である。
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