2019 Fiscal Year Research-status Report
都市縮減社会における住居系市街地の減容化に向けた換地と地域自治組織に関する研究
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19K04747
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
今西 一男 福島大学, 行政政策学類, 教授 (40323191)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市縮減社会 / 住居系市街地 / 減容化 / 土地区画整理事業 / 換地 / 区画整理見直しガイドライン / 暫定逆線引き / 地域自治組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は住居系市街地を対象に、その住民自らが地区の範囲を縮め、生活や活動の規模を①「減容化」することを前提とした、②「区画整理の換地を応用した土地交換の方法」、③「住民自らによる協議体制の組織」の3点を検討することにある。 この目的①~③に即して、研究期間3年間を半年ごとに6段階(ステップ)に分けて研究を行う。令和元年度は以下に示すステップ1・2の研究を行った。 ステップ1:研究目的・課題の鮮明化…まず①に関連して、本研究の背景となる人口や経済の規模縮小という状況に関する既存の研究や統計を収集・検討した。また、文献や資料に基づき、住民自らによる地区の「減容化」の概念の精緻化を図った。そして②③に関連して、各種制度等を参照した「土地交換」にまつわる概念や方法の検討、実例の収集による地域自治組織のモデル整理と理解を進めた。 ステップ2:全国調査の推進…②に関連して、換地の応用による実効性ある土地交換に関する調査を進めた。なお、ステップ1となる令和元年度前期に前倒しをして調査の進捗を図った。具体的に、まず、区画整理だけでは土地利用の減容化を図ることは難しいと考え、その前提となる区域区分制度に着目し、埼玉県を事例に「暫定逆線引き」の現代における適用可能性について調査した。その適用がなされた27市町への調査票調査、区画整理を適用して暫定逆線引きの解除を行った所沢市若松町地区での事例研究を行った。次に、現代では区画整理の有効性自体が問われていることに鑑み、その「長期化」と見直しに関する全国47都道府県を対象とした調査票調査を行うとともに、住民参加による見直し事例である東松山市和泉町地区を抽出して事例研究を行った。なお、いずれの調査も有効回答100%であった。 以上をふまえ、令和2年度、ステップ3・4への準備までを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したとおり、令和元年度はステップ1・2の研究を実施することができた。ステップ1については当期のみで完結する内容ではなく、引き続き既存の研究や統計を収集・検討し、熟考を重ねて増補していく必要がある。したがって継続課題であり、現在においても情報収集を継続していることから、「おおむね順調に進展している」と評価した。 ステップ2については換地の応用による実効性ある土地交換に関する調査を進めることが、当面の目標であった。この目標については研究実績の概要のとおり、区画整理だけでは土地利用の減容化を図ることは困難との着想から、区域区分制度特に暫定逆線引きの適用可能性について検討することができた。また、長期化した区画整理の見直しに関する全国調査から、換地のありように関する示唆を得ることもできた。これらの点で、研究の推進を図ることができたと評価している。 しかし、研究の目的③に関連して、地域自治組織のモデル整理に基づく事例調査を準備することを計画していたが、この点はさらに展開できたように考えている。既存の研究や近隣での実例の収集から、地域自治組織のモデル整理と理解を進めることはできたが、より網羅的な調査の準備までは進展しなかった。この点はステップ3以降に継続する課題であることをふまえて、「おおむね順調」と判断した。 この他、研究発表という点では、上記の暫定逆線引きと長期化した区画整理の見直しの2題について、学会の査読付き論文等を公表することができた。この点でも「おおむね順調に進展している」と考えている。令和2年度においては上記のとおり地域自治組織のモデル整理に基づく事例調査を進展させるとともに、その研究発表を行うことが積み残した課題となる。また、長期化した区画整理の見直しについては、関連する事例調査も行ったが研究発表に至っていないので、その公表も引き続く課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度、ステップ1・2の研究はおおむね順調に進展したので、当初の研究計画に即して令和2年度以降の研究も推進する。そのため現在までの進捗状況に示したとおり、令和2年度も引き続き既存の研究や統計の収集・検討を進める。合わせて、ステップ2で積み残した研究課題の進捗をまず図るように努める。 その上で、令和2年度はステップ3・4の研究を進める。その主な内容・推進方策は以下である。 ステップ3:事例調査の推進…まず、ステップ2において積み残した、研究の目的③に関連する地域自治組織のモデル整理に基づく事例調査の準備を進める。地域自治組織による地区の範囲、生活や活動そのものの見直しに至る協議が行われ、住居系市街地の減容化に向けた萌芽が看取される事例がどの程度あるのか、情報収集を進める。情報収集では検討対象となる住居系市街地の像を絞った上で、その所在する市区町村への照会を行う。照会は調査票・電話・ファックス・電子メール等を用いて行い、適切な中心事例の選定がなされるよう工夫する。以上をふまえ、現地調査を実施する。この調査により、減容化といえる取り組みを行う地域自治組織にはいかなるモデルがあるのか、明らかにする。 ステップ4:「換地の応用による実効性ある土地交換に関する全国調査」(研究の目的②関連)と「地域自治組織のモデル整理に基づく事例調査」(同③関連)の結果接合…ステップ2で実施した調査、及びステップ3で実施する調査の結果をふまえ、研究の目的①と関連付けて減容化の概念の修正というかたちで接合する。以上の理論的かつ実証的検討を行うことから、換地と地域自治組織の応用に向けたモデルを構築することがステップ4、すなわち令和2年度のねらいとなる。 なお、令和2年度当初段階で深刻化している新型コロナウイルス感染症拡大をふまえ、適宜、遠隔での調査実施など柔軟に推進方策を修正する。
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Causes of Carryover |
令和元年度末に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた東京出張が中止となったため、その分の旅費を執行できなかった。替わって急遽、研究に必要な図書を発注したが年度内納品は間に合わず、令和2年度において支払いとなるため、実質的に残額はなしに等しい状況である。
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Remarks |
研究発表に掲載した論文のいくつかは、福島大学行政政策学類社会調査論研究室ホームページより閲覧可能。
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