2020 Fiscal Year Research-status Report
タイにおける洪水を受容した居住環境の変容と居住文化を継承する防災絵本制作
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19K04748
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田中 麻里 群馬大学, 教育学部, 教授 (10302449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 居住環境 / 居住文化 / 洪水 / 受容 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
タイでは2011年に大規模な洪水があり、バンコクを含む中部タイ地域を中心に甚大な被害を及ぼした。しかし、小規模な洪水は各地で生じており、洪水を受け入れながら居住環境の維持管理が行われ、減災の仕組みが年中行事に組み込まれるなど固有の居住文化が形成されてきた。本研究では、地形的にも浸水が長期化する中部タイを対象として、洪水を受容した居住環境の維持管理の仕組みやその変容を明らかにし、地域に見られる減災の知恵や工夫を居住文化として捉え、それらを継承する防災教育の教材を制作することを目的としている。 前年度にアユタヤの中学校において、日本とチェンマイの洪水被害を抑えるための工夫や地域性豊かな居住環境の維持管理の仕組みをレクチャーし、アユタヤの洪水対応の地域性について考える防災ワークショップを実施することができた。今年度はその結果について取りまとめを行った。洪水が頻発するアユタヤの地元中学生への調査では、88%が自分の住む地域の過去の洪水の話を聞いたことがあり、76%が自分でも舟を漕ぐことができ、80%が自分の家でも洪水対応を行っており、中学生が洪水対応について具体的な行動が回答できるなど、洪水を受容した生活様式の一端が明らかになった。 一方、日本とチェンマイの洪水の経験を伝承する絵本の読み語りを行ったところ、アユタヤの中学生は日本で洪水が起こることに驚いた生徒が多く、チェンマイは山間部なのに洪水が起こることは不思議と回答する生徒もおり、チェンマイでの洪水警報がアユタヤのそれとは異なること、洪水後の地域の助け合いには共感する、など、他地域の防災絵本を通して初めて知ることも多く、自分の居住環境を改めて捉え直すことにもつながっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に前倒しで行った調査とワークショップを行っていたため、その結果の分析を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
洪水を受容した居住環境のあり方について歴史的背景およびその変容について文献調査に比重をおきながら考察を深めていく。
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Causes of Carryover |
Covid19のため現地調査ができなかったため、海外渡航費や人件費、謝金が発生しなかったため。Covid19の収束後に現地調査を予定しているが、文献調査にも比重を置き、オンラインを活用して研究研究者と綿密な打ち合わせを行い研究を進める。
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