2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス都市計画の立案組織-都市圏での協働・国の支援・半官半民組織の視点から
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19K04756
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鳥海 基樹 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (20343395)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルセイユ / ユーロメディテラネ構想 / プロジェクト都市計画 / 広域共同体 / 欧州文化首都 / フリッシュ・ラ・ベル・ドゥ・メ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はフランス調査を全く実施できなかったため、マルセイユ関連の資料の精読と書籍の執筆のみを進めた。同研究は各時代々の市長や地域の名望家の考え方に照応させて構成を決定している。 「地方×開発」の象限にいるのが1953年から1986年まで市長を務めたガストン・デフェールである。戦災復興から高度成長期にかけた開発指向を体現した市政を特徴とする。それを「地方×文化」の象限に移行させたのが、1973年にデフェールのパートナーとなったエドモンド・シャルル=ルーである。経済の停滞したマルセイユに、文化という次元を胚胎させた。それを原点に引き寄せたのが、1986年から1995年まで市長を務めたロベール・ヴィグルーである。国家の復権を通じたユーロメッド構想により衰退地区を活性化させ、再開発を文化化しながら地域再生を進めた。 ところが、以降のマルセイユの都市計画は4方向に分裂する。まず、「地方×文化」の文化化路線の継続である。例えば、工場をフリッシュ・ラ・ベル・ドゥ・メという芸術家の卵の溜まり場にコンヴァージョンして衰退した界隈を再生する。他方、1995年に市長となったジャン=クロード・ゴダンは「地方×開発」へ回帰する。ユーロメッド構想を単なる巨大開発に貶める規制緩和に堕落させる一方、リーマン・ショック以降は「国家×文化」に転向する。あるいは「国家×開発」の象限への転移である。国家が設置した公団が、適切な開発により民間投資を呼び込み都市再生につなげてゆく。最後に「国家×文化」の象限への跳躍である。政治的混乱に業を煮やした地元財界は、国家が文化政策を積極的に推進すること祈願し、欧州文化首都の誘致に乗り出す。その享楽の経験を基に、行政区画を超えた広域共同体が構成される。 最後は俯瞰と展望である。これまでの議論を俯瞰し、斜陽都市再生に関わる建築・都市計画や文化政策、そしてガヴァナンスへの展望を述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Cocid-19により現地調査が全くできず、インターネットで取り寄せた書籍の精読と、現在までにまとまったマルセイユの成果を公刊する計画に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
マルセイユの調査及び分析の成果に関しては、ほぼまとめが完了して出版の方策を探す必要がある。また、パリを初めとする他都市に関しては、Covid-19の終息を待って早急に現地調査を実施したい。
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Causes of Carryover |
2020年度は全くフランス調査が実施できなかったため
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