2022 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児支援に向けた小学校普通教室の構造化のニーズと可能性
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19K04762
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
佐々木 伸子 福山大学, 工学部, 准教授 (90259937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下倉 玲子 呉工業高等専門学校, 建築学分野, 准教授 (50510442)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 発達障害 / 通常学級 / インクルーシブ教育 / オープンスペース / 特別支援 / 不登校 / 校内支援拠点 / カームダウン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は発達障害のある児童が在籍する普通教室において障害による問題を発生しにくくするための「教室の構造化」の方法を検討することを目的としている。2022年度は特別支援の中で一人一人に対する「個別の配慮」に着目し、具体的な配慮の内容と空間の関係について事例研究を行った。調査対象は2021年度に分類した特別な配慮を行う学校より選定した国内の小学校及びインクルーシブ教育実施事例のオーストラリアの学校である。 国内では通常学級で行われている個別の配慮の実態を明らかとするために6校で児童の行動観察調査を行った。特別支援学級と通常学級を分けた「教室分離型」の従来校では、配慮を行う空間が普通教室内に収まらず校舎や敷地全体が使われる実態を把握した。オープンスペースを持つ「取り出し型」の学校では普通教室を拡大し、フレキシブルに教室範囲を変えた使い方が明らかとなった。また、個別の配慮の具体的な方法を把握するために不登校などの通常学校に馴染みにくい児童を対象とした全寮制の「支援施設型」学校の調査より個別の配慮の空間とカームダウンのプロセスを明らかとした。 インクルーシブ教育の先進事例として障害のあるなしに関わらず全ての子どもが同じ学校で学ぶオーストラリアで小学校3校を対象に児童の行動観察調査を行った。教室周辺の部屋や空間を使って個別の配慮を行う実態を把握した。多様な児童の行動を受け止める教室の家具配置と不適応行動の対応に使われる空間の環境要素については分析中である。 以上の調査結果より、個別の配慮は教室の中だけでは行われておらず、教室周辺との関係が重要な要素となっていることが明らかとなった。今後は、発達障害への空間的配慮の事例調査と学習環境をつくる教員への調査を行い、構造化の条件を整理する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID19によって学校訪問調査ができない期間が2年続いたため、研究期間を1年延長した。2022年度はようやく学校調査の許可が取れて行動観察調査を実施できた。海外調査はコロナ対策の関係で調査先をオーストラリアに変更して実施した。結果、計画していた研究内容はおおむね順調に行うことができた。残り一年の調査で完了することができる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の国内の行動観察調査より教室環境の問題点が整理できた。しかし、教室をどのように改善するかの方法がまだ明らかとなっていない。そのため2023年度はこれまで出入国条件の厳しさから実施できなかったスウェーデンにおいて発達障害に特化したリソース学校の調査を行い、発達障害に配慮した教室環境条件を明らかとする。また、国内の学校を対象として構造化のための具体的な改善方法の検討を行う。方法は教員への教室整備ニーズのアンケート調査と実際の教室環境の家具アレンジの実践である。以上の結果を用いて普通教室の構造化のモデルプランを作成する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により2020年度、2021年度に学校での観察調査ができなかったため、2022年度は集中して国内外の調査を行なった。しかし、当初計画していたスウェーデン調査と国内の先進事例調査ができていない。これらを2023年度に実施するために次年度使用額が生じている。
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Research Products
(8 results)