2022 Fiscal Year Research-status Report
復興まちづくりに災害遺構等を活かすためのジオパーク推進協議会のエリアマネジメント
Project/Area Number |
19K04766
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
石川 宏之 静岡大学, 地域創造教育センター, 准教授 (50405726)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジオパーク / 土砂災害 / 復興まちづくり / 災害語り部 / メモリアル公園 / 空地 / 空き家 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日、地方都市では、人口減少による過疎化や少子高齢化、地場産業の衰退などで地域社会を維持することが困難な状態になっている。また、地震の他に洪水や土石流など大規模な自然災害が多発している。これらの地域問題を解決するために地質遺産を活かして持続可能な地域社会をつくるジオパーク活動が世界各地で展開されている。 2022年度の研究では、次世代へ土砂災害の記憶と教訓を伝えるためにジオパークの役割と空地や空き家を活かす復興まちづくりのあり方について明らかにした。調査対象は東京都大島町を地理的領域とする伊豆大島ジオパークで、2022年9月にジオパーク活動に携わる大島町観光課職員と防災対策室職員、住民団体の代表者、2013年土砂災害の被災者に聴き取りを行った。 結論として、まず、次世代へ土砂災害の記憶と教訓を伝えるためにジオパークの役割は、①島民の理解と協力を得てジオ資源や災害遺構等を保全保護すること、②過去の災害教訓を収集しつつ島内外へ普及すること、③次世代へ災害文化を継承するために語り部が教育活動できる場を設けることと考える。つぎに、空地や空き家を活かす復興まちづくりのあり方とは、①メモリアル公園の管理と併せて土砂災害現場の民有地に残された災害遺構を保全するために自治体は、その方針と方法を検討して被災地権者に対して助成すること。②過去の災害教訓を収集・普及するために自治体は、土砂災害現場の空地と空き家を買い上げ、その建物をリノベーションして土砂災害のメカニズムと災害時の様子、復興過程を展示する「災害復興博物館」を整備すること。③次世代へ災害文化を継承するために学芸員は、当該博物館で新たな語り部を育てる教育プログラムや語り部のビデオ教材を作り、民間団体は博物館と災害遺構等を巡る教育旅行向けのジオツアーを開発するべきと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、次世代へ土砂災害の記憶と教訓を伝えるために復興まちづくりでの伊豆大島ジオパークの役割と空地や空き家を活かす復興まちづくりを明らかにした。そして、2023年9月に開催される日本建築学会大会(近畿)においてその研究成果を発表する予定である。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで得られたアンケート調査の結果と現地で収集した文献資料やインタビューなどのデータにより知見を深めながら整理し、復興まちづくりにおいて災害遺構等を活かすためにジオパークの運営組織でエリアマネジメントを行う際の課題と大学や博物館の役割についてまとめていく。そして、国内における新型コロナウイルス感染症の動向を注視しながら、可能であれば伊豆半島ジオパークや伊豆大島ジオパークなどで補足調査を検討する。また、第13回日本ジオパーク全国大会(銚子)などにも参加し、日本のジオパークについて情報を収集する。そして、これらの研究成果を日本建築学会や日本都市計画学会などの大会や学術雑誌で発表する。
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Causes of Carryover |
(理由)日本のジオパークに関する情報を収集するため、伊豆大島ジオパーク(東京都)で現地調査を実施したが、第12回日本ジオパーク全国大会(白山手取川)にはオンラインで参加したので旅費の支出が無くなり、現時点で未使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、これまでの研究成果をまとめて発表するために大会参加費や旅費を支出する。また、調査研究で使用する機器などの購入費用に充てることも検討する。
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