2019 Fiscal Year Research-status Report
Urban farm land conservation in an early stage Agricultural-residential rental apartment area before Agricultural and residential land association law enforcement
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19K04767
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤木 昌典 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90254458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都市農地 / 農住構想 / 民間賃貸住宅 / 都市近郊農村 / 都市化 / 土地区画整理事業 / スプロール現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、首都圏・中部圏・近畿圏に存在する初期農住賃貸住宅(農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の利子補給制度を利用した賃貸住宅)109件259棟を対象に、その特性を把握した上で、調査対象地区を選定することを目的とした。 最初に、地図、住宅地図、過去の航空写真、現在の航空写真を用いて、対象住棟の位置の特定作業を行った。この結果、初期農住賃貸住宅が集合的に分布している地区として、兵庫県5地区、愛知県13地区、岐阜県1地区、神奈川県1地区の計20地区が調査対象候補地区として抽出できた。これらの地区での現地観察調査を行い、住棟の現況(老朽化の度合や入居状況など)や地区の土地利用現況(とくに農地の分布など)を把握した。その後、現地観察調査の対象圏域を拡大し、愛知県1地区、静岡県1地区、兵庫県1地区の3地区を追加実施した。 他方、細密数値情報、数値地図5000等の土地利用データを用いて、1970年代~2010年代の各地区の土地利用の構成比率の変化についての分析作業を開始し、上記のうちの16地区についてデータセットを整えた。また、これらの地区での生産緑地地区の有無等についても把握した。 なお、現地観察調査により、①初期農住賃貸住宅と同時期に住宅金融公庫融資など他の財源を活用した同様の賃貸住宅が存在すること、②初期農住賃貸住宅の建設と同時期に土地区画整理事業などの都市基盤施設整備が行われている地区が多くスプロール現象はあまり見られないこと、③住棟の管理状況は経営主体の種別(法人・個人)や管理委託先(農協・不動産会社かなど)によって差異があること、などが新たに判明した。 今後詳細に調査を行う対象地区については、農地の残存度合や市街地での混在度合あるいは区域区分による近接共存の状態、住宅の経営主体や管理主体の種別などに応じして選定することが可能な状況がほぼ整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な調査対象地区については、現地観察調査までを終えることができた。さらに、当初の対象都市圏域を拡大する中で、異なる特徴を有する地区を捕捉できたことや、当該の利子補給事業以外での同種の賃貸住宅の建設も捕捉するなど、研究開始時の想定を越えた事実確認ができため、研究の分析軸が広がる可能性が出てきて、研究の深化が期待されることが挙げられる。他方で、土地利用に関する既公開のデジタルデータは近年のものが整っておらず、最新の土地利用現況や変化を定量的に正確に把握することが簡易ではないことなども判明してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、選定した調査対象地区について、空間調査ならびに初期農住賃貸住宅所有者へのアンケート調査およびインタビュー調査を実施し、賃貸住宅経営および都市農地保全の現状と課題を詳細に明らかにする。 空間調査は、2019年度の現地観察調査をより詳細に補足し、住棟の状況(住棟の形式、老朽化なども含めた管理状況、付随施設や敷地の利用状況など)、住棟周辺の土地利用状況、周辺市街地の状況(建物用途、施設分布、農地の残存・利用状況等)等を把握する。 初期農住賃貸住宅所有者への調査実施には、所有者とその住所の特定が必要であるため、登記情報の閲覧により行う。この作業には多くの時間を要すると想定される。 所有者と住所を捕捉後、郵送等によりアンケート調査を実施する。調査内容は、初期農住賃貸住宅の経営方法や経営現状ならびに将来展望、農地所有の有無と営農状況、農地保全や土地活用に対する将来意向などである。さらに、アンケート調査回答者の中から、インタビュー調査への協力依頼を経てインタビュー調査を実施し、詳細を把握する。 また、2019年度調査により、かつて農協(JA)が農家に対して賃貸住宅の経営を推奨し、その後も管理・仲介等の委託を受けて現在に至っている地区が愛知県に多いことが把握されているので、農協(JA)の担当者へのヒアリング調査も実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、旅費とその他経費の執行額が当初予定よりも少なかったことによる。旅費については、調査対象地区が愛知県に多く存在することが判明し、宿泊を伴わずに日帰りによることができて経費節減になったことと、3月に実施を予定していた複数回の現地観察調査を新型コロナウィルス拡散防止の観点から延期したことによる。また、その他経費については、土地登記情報の閲覧のための登記情報提供サービスの利用が初年度は想定ほどには生じなかったためである。その一因として、愛知県の対象地区について、土地登記情報閲覧の基礎となるブルーマップの情報を3月に愛知県図書館にてコピーする予定であったが、同じく新型コロナウィルス拡散防止のため同図書館が臨時閉館となり入手できていないことがある。 旅費については、コロナウィルス拡散が収束し次第、現地調査ならびにインタビュー調査を実施していくことにより使用し、その他経費についてもブルーマップの購入を進めるなどして登記情報提供サービスの利用を本格化させることにより使用していく計画である。
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