2019 Fiscal Year Research-status Report
Basic research on the established requirements of subleasing businesses for vacant houses in rural areas
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19K04771
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
徳田 光弘 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (60363610)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 空き家活用 / 空き家所有者 / 空き家利用者 / 空き家活用団体 / アクションリサーチ / 回帰分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「地方における空き家等転貸事業の成立要件に関する基礎的研究」と題し、空き家等の利活用が過酷な地方の地方において、空き家等利活用策の一つと目される転貸事業の実態と成立要件について、実地調査とアクションリサーチによる実証実験をもとに明らかにすることを目的としている。具体的には空き家等転貸事業の成立用件を1)空き家所有者、2)空き家利用者、それらを結ぶ3)中間組織(空き家活用団体)、の三者に辿り研究を進めている。以下に、初年度のそれぞれの研究実績を概説する。 1)空き家利用者について、空き家等の現所有者と元所有者との意識の違いに着目した上で、空き家所有者の意識とその関係構造を明らかにした。まず、五島市役所の協力のもと、五島市の空き家所有者全557件(有効回答数:153件)を対象に、アンケートを実施した。これらの結果により、探索的因子分析およびロジスティック回帰分析等を行ったところ、現所有者と元所有者の間には明確な情報格差があること、経済合理性以外の郷土愛によっても空き家の利活用等は進可能性があることなどが明らかになった。 2)空き家利用者について、地方の地方における空き家等利用者のメインターゲットとして移住者に着目し、同じく五島市役所の協力を得て、移住前後での満足度や定着度を図るために移住者265件(有効回答数:80件)に関するアンケート調査を実施した。これらの結果により、探索的因子分析および重回帰分析等を行ったところ、暮らしやすさや移住の定着等に関して、移住前後での差異、およびそれらの要因が明らかになった。 3)中間組織について、同様に五島市において、五島市内の専門事業者(不動産業者、建設業者、弁護士、建築士、弁護士、IT技術者等)有志によって、NPO法人を設立するとともに、五島市との連携協定を結び、空き家等のマッチングについてアクションリサーチの体制を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、研究実績の概要にも示したように、1)空き家所有者、2)空き家利用者、3)中間組織(空き家活用団体)について、それぞれ五島市役所、さらには長崎県庁の担当者や、五島市有志の方々の協力が得られ、各調査およびアクションリサーチを実施するとともに、比較的良好な分析結果が得られたことが理由である。特に、現実的に考えると、初年度で1)~3)に対して、それぞれ調査分析が順調に進むとは想定していなかったため、その意味においては、「当初の計画以上に進展している」と言える。 一方、課題は、特に3)中間組織について、長崎県庁担当者と協力連携しながら、長崎県の空き家活用における中間組織への支援事業に応募した中間組織(県内三地域程度)への調査を進めようと準備していた。ただし、初年度は、当方らが立ち上げた五島市のNPOの中間組織のみが手を上げ、当初想定していた他地域の中間組織から手が上がらず、結果、他地域の中間組織への調査が進まなかったことである。すなわち、この点で言えば「やや遅れている」と言える。なお、次年度の支援事業は、長崎県内2~3地域の中間組織から応募が来ているとの長崎県庁担当者からの情報も入っているため、これら他地域の中間組織への実態調査も進めていく予定である。 以上の理由より、概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の2020年度は、特に3)中間組織について、五島市において立ち上げたA)中間組織のアクションリサーチと、B)他地域の中間組織への実態調査、を主に進めることを主に実施する。また、C)初年度の研究成果の論文発表も併せて実施する。 A)中間組織のアクションリサーチについて、五島市において「NPO法人五島空き家マッチング研究所」を各種専門業者有志らと設立した。また、本法人は、五島市役所と空き家活用に対する協定を結び、公民連携で空き家活用を進めることとなった。そして現在、空き家所有者へのアナウンス、空き家所有者からの相談対応、空き家の実地調査、空き家活用の企画設計等、リノベーション工事、空き家活用物件の運営という順で、事業が始められた。これら活動をアクションリサーチとして順次記録していくとともに、その時々でどのような判断がなされ、結果、空き家活用はどのように進んだか、空き家活用の成否も含めて、データを蓄積していく。 B)他地域の中間組織への実態調査について、上記の五島市における中間組織の活動のみならず、次年度より2~3地域で類似の取り組みがスタートする予定である。これら中間組織は、そもそもの組織の成り立ちや組織の構成員、行政を含む関係団体との関係、空き家活用への関わり方や進め方などが異なる可能性がある。したがって、基本的には現地に趣き、それら各団体のその類似性と相違性について実態調査を実施する。なお、コロナウィルス感染拡大の影響が長引く場合は、遠隔のままでできる調査の方法も検討する。 C)初年度の研究成果の論文発表について、特に1)空き家所有者に関する研究成果は、再整理することで査読論文への投稿が可能であると考えている。そのためには、解析データの再検証、および異なる解析方法の再検討が必要である。これらを進めつつ、投稿様式に沿って論文をまとめる。
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