2019 Fiscal Year Research-status Report
市街地区画復元図のデータベース化と現代まちづくりに継承された都市設計手法の検証
Project/Area Number |
19K04772
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
久保 勝裕 北海道科学大学, 工学部, 教授 (90329136)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 北海道 / グリッド市街地 / 市街地区画図 / 復元図 / 環境共生型都市設計手法 / 都市デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、以下を目的としている。(1)北海道に残された膨大な開拓関連資料の中に散在する殖民都市の「市街地区画図」を発掘し、CADを用いて精緻な復元図を作成し、データベース化する。(2)これをGIS上の現代の地図情報や多様なデータと重ね合わせ、自然環境に適応した環境共生型の都市設計手法を解明する。(3)これらで蓄積された多様な都市設計手法(山当て・景観軸など)が、現代の都市デザインにどのように活用されているかを検証し、類型化する。 研究初年度である平成31年度(令和元年度)は、主に上記の目的(1)を実施し、約60都市の復元図を作成した。予定していたDID都市の資料収集を中心としながらも、復元図を作成するために有効な資料が発見された都市から、随時、CADを用いた復元図を作成した。有効な資料とは、道路および街区・宅地寸法が明示されているか、地図上で実測可能なスケールで作成された市街地区画図である。これらの資料の多くは、北海道立文書館が所蔵する北海道開拓使や北海道庁が明治期に作成した一次資料を用いている。 また、上記の目的(2)については、「北海道殖民都市における奇岩に向けた景観軸整備の可能性、日本都市計画学会都市計画論文集第54-3号、pp391-398、2019.10」を発表した。GISを用いて奇岩への軸線を客観的に計測し、さらには軸線の形成過程を明らかにした上で、その後の軸線の整備実績から、現在の都市デザインにおける歴史的景観の位置付けを検証したものである。奇岩は、市街地から間近に見えることに加えて、その特徴的な景観によって古くからアイヌらの象徴空間である場合が多く、市街地が形成された明治以降も地域のシンボルとして認知されている。そのため、奇岩周辺や道路沿いの整備が進められ、軸性が強化されている実態を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、目的(1)に対する調査・分析が予定通りに進捗している点である。まず、難航が予想された一次資料としての市街地区画図の収集が比較的順調に進んだ。また、復元図を作成する過程で、原野区画と市街地区画の関係が徐々に解明されたことから、寸法が明記されていない市街地区画図の詳細寸法の読み取りが進み、約50都市の復元図を作成につながった。 第二に、目的(2)に対する調査分析が進展した点である。上述の通り、市街地近傍の奇岩に向けた軸線の形成実態を明らかにした上で、現在の都市デザインへの継承の実態を考察できた。さらに、河川との関係からみた検証も進んでおり、舟運の船着場を起点とした都市軸の形成実態に関する分析を進めた。また、寺社の再配置の実態からみた市街地再編に関する分析も進み、これら両者は学術論文誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の予定通りに研究を進める。 特に目的(1)における市街地区画図の発掘作業と復元図のデータベース化は、今後の北海道の市街地研究の基礎的資料となることから、発掘作業を継続すると同時に、復元図の精度の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下である。(1)国内旅費が想定を下回ったことである。市街地区画図の発掘作業を、研究代表者が居住する自治体内にある北海道立文書館に集中したために、道内地方都市での教育委員会等を対象とした調査の回数が想定を下回った。(2)研究協力者用のパソコンの購入時期が遅れ、翌年度分に組み込まれたことによる。これは調査の手順の問題であり、研究協力者には資料の発掘調査を先行してもらい、その後に復元図の作成を依頼した。従って、現状における次年度使用額は表示された金額の1/3程度である。 使用計画は以下である。上述の理由により、今年度は地方都市での調査が増えることが予想されるため、これに充当する。他は概ね予定通りの使用を考えている。
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Research Products
(1 results)