2019 Fiscal Year Research-status Report
精神科病院の看護拠点のEBD(根拠に基づく設計)に関する実証的研究
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19K04774
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
厳 爽 宮城学院女子大学, 生活科学部, 教授 (60382678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精神科病院 / 看護行為 / 看護拠点 / 空間の連続性 / 「居るだけ」の看護 / 精神疾患患者に配慮した調査手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究計画のうちのテーマB「看護拠点の改修(スタッフステーション面積の削減、カウンターのオープン化)の有効性への検証」に関わる調査を実施した。なお、当初予定していたテーマA(アンケート調査)は回収率の向上を図るための調整に時間を要したため、次年度に実施する予定である。 先行研究として実施した精神科病院でのスタッフ追跡調査においては、従来の調査手法では看護スタッフの看護行為を正確に把握できないことが明らかになった。今年度は一般急性期病棟のスタッフ業務把握で使われている電波測定システムを用いてスタッフの動線と看護行為を記録するという調査手法を試みた。アンテナの設置方法など、患者に不安を与えない配慮や、調査手法としての確立にはまだ課題はあるものの、施設調査の新たな発展に寄与できる手法となることが期待される。 同時に、従来の手法によるスタッフの追跡調査、患者を対象とした行動観察調査も合わせて行なった。スタッフの追跡調査についてはアンテナによる測定結果と従来の追跡調査結果を比較し、もっとも精度の高い調査手法を確定する。 今回の調査を通して、物理的仕切りがなければ、申し送りや記録などの間接的看護業務と、患者に直接関わる看護業務との隔たりを生じず、関節的看護業務をしながら直接的看護業務を行うことができることを確認した。看護拠点と患者の居場所の空間連続性の大切さなど、精神科医療ならではの看護は、精神科医療ならではの看護拠点の構築から始めることの必要性などが示唆された。 海外調査においては、精神科専門看護師への聞き取りを行い、看護行為のうち、患者のそばに「居る」(寄り添う)ことの重要性が言及され、今後の看護行為の分析に生かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実施の概要」でも述べたように、当初予定していたアンケート調査を次年度に実施することとし、本来2020年度に予定していたスタッフ追跡調査を2019年度に前倒して実施した。 前者の変更は回収率の向上を図るために、日本精神科病院協会や国立保健医療科学院などの協会、厚生労働省直轄研究機関と共同で実施する可能性を探ったため、次年度の実施とした。 また、前倒しして実施したスタッフ追跡調査は調査対象病院の改修スケジュールの変更によるものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で実施できなかったアンケート調査を今年度に実施する。 一方で、コロナウイルス感染症拡大のため、海外渡航、病院への訪問が難しい状態となっている。研究計画においては2年度目に実施する予定の精神科病院でのフィールド調査、海外精神科病院のフィールド調査の実施は不確実となっている。夏に予定していた国内のフィールド調査は感染拡大状況、病院の受け入れ状況を鑑みて判断する。また、国内のフィールド調査を秋以降に実施する方向で調整する。 フィールド調査、海外調査が実施できない場合は次年度(3年度目)に繰り越して実施し、今年度は医療スタッフ、精神科病院設計実施を有する設計者のヒアリング調査を行う。 また、アンケート調査の回収率が芳しくない場合は、日本医療福祉建築協会が発行している「医療福祉施設情報シート」(過去10年分)を用いて空間分析を行う。
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[Book] まちの居場所2019
Author(s)
日本建築学会
Total Pages
173
Publisher
鹿島出版会
ISBN
978-4-306-04675-7 C3052