2020 Fiscal Year Research-status Report
精神科病院の看護拠点のEBD(根拠に基づく設計)に関する実証的研究
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19K04774
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
厳 爽 宮城学院女子大学, 生活科学部, 教授 (60382678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 看護拠点 / 分散化 / 追跡調査 / 患者との関わり / 共用空間 / 患者の居場所 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年2月に精神科病院の重度かつ慢性期及慢性期病棟で実施した改修前調査の結果を下記の通り要約し、報告する。 慢性期病棟のスタッフの滞在場所はスタッフステーションが主になっている。患者の過ごし方も比較的落ち着いているが、スタッフと患者の関わりが少なく、患者の居場所の選択肢も乏しいことが課題である。重度かつ慢性期病棟では、アイホン株式会社の協力によって全看護スタッフの精度の高い追跡調査が実現された。調査結果として、スタッフが閉鎖的なスタッフステーションから出ることが少なく、患者はスタッフステーション前からスタッフとのコミュニケーションを図ろうとしている現状が挙げられた。また、スタッフの動線から、スタッフの空間利用に偏りがあることが明らかになった。スタッフステーションと病室の経路に立地する空間に滞在したが、経路から外れる空間での滞在や停留はほぼ見られなかった。 上記の調査結果を踏まえて、看護拠点と病棟環境に対して以下のように提言する。 【看護拠点の分散化】スタッフが病棟全体の様子を把握できるような空間配置が求められている。看護拠点を病棟の奥側にも配置することで、病室への距離が近くなり病室や廊下などに滞在している患者の様子を見守ることができる。 【患者の居場所の分散化】患者の空間選択の幅が広がるように、共用空間を病棟の手前に一か所に集約するのではなく、共用空間病棟内に点在させ、分散させることにより、スタッフの移動の通過点が増え、患者との関りが増加することにつながると考えられる。環境改善と共に、より患者と関わるようにスタッフの意識改革を促していくことも必要であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた病院での改修後調査が実施できなかったため、予定していた研究の進捗スケジュールは大幅に遅れている。 訪問を伴わないスタッフへのアンケート調査の可能性も探ったが、医療機関は諸対応で緊迫な状況に置かれているため、アンケートへの対応も難しく、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象病院の改修は2021年夏に全て完成し、フルオープンとなる。改修後調査は8月以降順次に実施していく予定である。また、2021年度内では、新型コロナウイルス感染拡大の収束が難しいと思われるため、調査員はPCR検査を実施した上で調査を行うことで病院の了解を得ている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 2020年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、予定していた調査(国内、海外)や学会のための旅費、調査のための人件費は支出できなかったためである。 使用計画 2021年度に調査の実施ができれば、調査旅費人件費に当てる予定である。
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