2021 Fiscal Year Research-status Report
基盤地図情報を活用した地区レベルの都市空間要素の配置シミュレーション手法の構築
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19K04775
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
斎藤 千尋 明海大学, 不動産学部, 教授 (30235048)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 建物配置の予測 / 不確実な市街地の表現 / まちなみの予報 / 基盤地図情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度中に以下の結果を得た。 基盤地図情報の道路縁データ、建築物外周線データを用い、建物の配置状況に基づく建物配置の予測モデルを得ること。建物配置の予測モデルは、隣棟からの壁面の後退距離と前面道路からの後退距離の、期待値、分布から構成される。期待値、分布は街区単位で推定し、建物を囲む隣棟の外周線と前面道路の境界線からの後退距離の期待値を半径としたバッファ図形の重なりを期待建築外周線とし、これを中心に後退距離の標準偏差の幅で70%の確率で建築物の外周線が位置する範囲を表現している。 予測モデルに基づくランダムな建物配置を行うプログラムの開発。建物の建て替えの確率が同一であると仮定し、街区単位で建て替わる建物を乱数で選択し、その位置での新たな建物の配置、形状を建物配置の予測モデルから生成する。期待建築外周線を中心に後退距離の標準偏差をもつ正規分布により、ランダムな建物を生成する。形状の生成においては、期待建築外周線によるポリゴンを構成する線分を直交方向にランダムに変位させるようにしている。ねじれが生じた場合には配置形状は採用せず、ねじれのない図形が得られるまで試行を繰り返すようにしている。 これらの結果を示す市街地の描画方法を検討し、不確実な市街地の表現方法を構築した。箱ひげ図や台風の進路予測に用いられる描画方法を参考に、予測モデル図では、70%の確率で外周線が位置する範囲を点線で示すようにしている。またランダムな建物配置においては、ある試行において建て替えの選択がなされた建築物の新たな3次元形状を点線で描画し、仮の形状であることがわかるような表現を採用した。 以上の予測モデル、ランダムな建物配置のプログラムはJavaScriptで開発しブラウザ上で実行できるようにしている。Sparkによる並列処理ができるようJava言語への変換に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度からのコロナ禍の影響により以下の二つの理由でエフォート率が大幅に低下したためである。 遠隔授業対応のために授業の準備、フィードバックの時間が想定外に大きくなったこと(2019年と2021年の比較で約300時間/年で増加)。 家族が介護施設を利用しなくなったこと、症状の進行により介護に要する時間が増えたこと(2019年と2021年の比較で約120時間/年の増加)。 研究時間は、2021年度は申請時に申請したエフォート率10%に近い時間を確保できたが、2020年度中の不足をまだ補えていない。 研究環境の変化に合わせ、2021年度中は当初から2021年度に予定していた研究の一部の「不確実さを伴う市街地像を示す手法を検討する。」ことに集中した。この部分については当初の予定通り2021年度中に一定の成果を得ているが、その分、2020年度中に予定していた建物高さを考慮した分析が後回しになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
建物配置の予測モデルのプログラムをJava言語に変換し、Amazon Web ServiceのElastic MapReduce上で、並列処理のフレームワークのSparkを用い、街区単位の並列処理による建物配置の予測モデルを得られるようにする(7月をめどとする)。 助成決定後に事業が本格化した、国土交通省のPLATEAUにより整備公開された3次元建物形状データも援用し、現状、用途容積地域、方位、高さを考慮しない隣棟間隔、後退距離の分布予測となっている予測モデルをより実態を反映したものに改良する。申請時に使用を計画していたAW3Dビルディングデータによる3次元モデルについては、PLATEAUのデータ公開状況も考慮し、同一地域でデータの使い勝手の比較ができないかを検討している(10月をめどとする)。 10月以降、計算機クラスターにより得た予測モデルに基づき、ブラウザー上で市街地の予報図を描画するシステムの構成を検討するとともに、投稿論文に結果をまとめる。 申請時予定していた、植栽を考慮した分析は現時点では困難と考えている。
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Causes of Carryover |
一つ目の理由は、Amazon Web Service(AWS)上で実行する分析プログラムの作成が遅れたためである。2021年度は、主に不確実な市街地の描画のための作業を行ったため、開発したプログラムがブラウザ上で実行できるJavaScriptによるものとなった。結果として、AWSを使う場面が想定より大幅に減ってしまった。 もう一つの理由は、2021年度中の3次元地図データの発注を見送ったためである。申請時に使用予定していた3次元地図データAW3Dビルディングデータの他に、国土交通省のPLATEAUにより整備、公開されているデータを使う可能性を検討したためである。
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[Book] 不動産学の新展開2022
Author(s)
明海大学不動産学部創設30周年記念出版会
Total Pages
208
Publisher
日本評論社
ISBN
978-4-535-54033-0