2019 Fiscal Year Research-status Report
オープンシステム型保育/教育と特別支援との両立を実現する包摂型環境設計の研究
Project/Area Number |
19K04796
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
古賀 政好 東京電機大学, 未来科学部, 研究員 (20751225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 あすか 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (80434710)
倉斗 綾子 千葉工業大学, 創造工学部, 准教授 (80381458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オープンプラン型小学校 / 特別支援 / 包摂(インクルーシブ) / 自閉症 / 小学校と特別支援学校の複合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではオープンプラン型保育/教育施設において特別支援ニーズを包摂するための環境整備面での課題や工夫を明らかにすることを目的とする。2019年度は教育施設を対象に,①文献調査でオープンプラン型小学校の全国的な事例を収集し,②先駆的にインクルーシブ教育を行う従来型小学校での事例調査を実施した。またオープンプラン型小学校かつ特別支援学校を複合する特徴的な事例がみられたため,③特別支援学校の他用途との複合化を調査した。 ①1994年1月~2019年4月の建築雑誌(新建築,近代建築,建築設計資料,スクールアメニティ)に掲載されたオープンプラン型小学校;計383事例を収集し,自治体ごとに整理した。また近代建築誌から読み取れる特別支援への配慮点と多様な空間の特別支援での活用を検討した。これは柔軟な学習形態に対応するオープンプラン型小学校で特別支援ニーズをどう保障するかという検討で意義があり,今後の調査の視点を定まる上で重要である。 ②1970年代の開校当時から自閉症児を受け入れ,インクルーシブ教育を行う小学校での児童の滞在や学習交流,環境整備をヒアリング調査とプレ観察調査で把握した。この校舎は従来の片廊下型だが自閉症児学級と通常学級の教室を交互に配置,教室内が見える廊下側窓など建築上の工夫が見られ,特別支援の包摂に資する環境整備への知見が期待できるという意義と重要性がある。 ③関東甲信越1都9県の特別支援学校の複合化の状況を調査した。人口密度が低い県ほど他用途との複合事例が多い傾向がみられた。また特に医療施設13事例と小学校12事例との複合が確認でき,主に用途が棟で分かれる分棟型である。この調査では特別支援学校に着目して小学校との複合事例を抽出する意義がある。小学校内での特別支援の包摂だけでなく,地域の実情によっては特別支援学校と小学校との一体的整備での包摂も重要だと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では,建築雑誌から収集したオープンプラン型小学校事例を自治体ごとに整理した(「研究実績の概要」①)のち,2020年1月~3月にかけて関東圏と関西圏を対象に,各自治体へ収集事例の設計時点のプロポーザル要項や設計提案等の情報開示請求依頼やアンケートを行い,特別支援への配慮点や各諸室の設計意図を調査する予定だった。しかし新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大の影響で調査が困難な状況となり停滞している。 このため「やや遅れている」と判断するが,「研究実績の概要」で示した②先駆的にインクルーシブ教育を行っている従来型小学校での観察調査と,③小学校と特別支援学校の複合化での包摂型教育環境の調査分析と研究が発展しており,研究自体は滞りなく推進できている。 なお自治体への調査停滞につき,現在では収集事例の学級数や児童数,空間構成等の基本情報の整理,設計趣旨の読み取り等の分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「研究実績の概要」に示した①~③につき,以下の通り進展することを予定している。 ①新型コロナウイルス感染症拡大の状況等を勘案しながら,関東圏と関西圏を対象に,各自治体へ収集事例の設計時点のプロポーザル要項や設計提案等の情報開示請求依頼やアンケートを行い,特別支援への配慮点や各諸室の設計意図を調査し,可能な範囲で各事例の現地訪問を行いヒアリング調査と観察調査で利用実態を明らかにする。 ②当初は定期的な観察調査により,校舎の使われ方や通常学級児童と自閉症学級児童との学習交流を明らかにする予定だった。しかし新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,本年度は学校責任者への定期的なヒアリング調査により感染症予防と児童の学習交流の両立の観点から環境整備や現状校舎の使いこなしのあり方を検討する。 ③今後は関東甲信越だけでなく全都道府県での複合化の事例調査を行う。また小学校と特別支援学校との複合事例への運営や交流の状況,複合による通学圏域の変化などをヒアリングし,可能な範囲で観察調査を行うことで実態を捉える。 なお新型コロナウイルス感染症の今後の状況によって調査遅延や調査手法の変更を余儀なくされることが懸念される。アンケート調査やヒアリング調査ではインターネットやオンラインの活用,観察調査では調査員が現場に入らなくてもできるGISを用いた教員や児童の動線調査やビデオカメラを用いた定点モニタリング調査など,個人情報保護に最大限の注意を払いながら可能な調査手法を柔軟に検討する。
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Causes of Carryover |
■次年度使用額が生じた理由 新型コロナウイルス感染症の影響で,2020年1月~3月にかけて行う予定だったアンケート調査等が実施できず,それに係るアンケート作成費・人件費・郵送費等が使用できなかったため。また実地訪問による調査が延期となり,その旅費等の費用が使用できなかったため。 ■使用計画 次年度へ持ち越した助成金は上述したアンケート調査のためのアンケート作成費・人件費・郵送費と,実地調査のための旅費・人件費等で使用し,翌年度分として請求した助成金は当初の予定通り使用する。
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