2022 Fiscal Year Research-status Report
Study of the change process of the Japanese Architecture judged from the frame form and the internal space
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19K04804
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
光井 渉 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (40291819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 歴史的建造物 / 日本建築 / 架構 / 民家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、実在する歴史的建造物を通じて、その架構形式と内部空間のデザインとの相互関係を検証し、加えてその相互関係が変容していく状態を観察することで、日本建築に関する新たな知見を得ようとするものである。2022年度は、前年度までに抽出して資料収集を完了していた17世紀に建設された初期の民家建築に関して、架構形式の実地調査及び図面作成を行った。 2022年度の実地調査は3度行った。まず8月4~5日には阿久沢家住宅(前橋市)・生方家住宅(沼田市)・彦部家住宅(桐生市)・茂木家住宅(富岡市)の4棟、2月7~9日には平井家住宅(稲敷市)・中崎家住宅(水戸市)・椎名家住宅(かすみがうら市)の3棟、2月21~23日には臼井家住宅(大和郡山市)・中家住宅(安堵町)・杉山家住宅(富田林市)・中家住宅(熊取町)の4棟について、実地計測・写真撮影などを行い、その架構の詳細を示す図面を作成した。また、8月22~24日には、宮﨑県内の民家3棟について架構の確認と写真撮影を行った。 2022年度に調査及び架構図の作成を行った11棟は、いずれも基本的な上屋下屋形式の架構をベースにしながら、桁行方向の梁を用いて空間の拡張を行っているものであり、その手法の発達を確認できる事例である。また茂木家に関しては、土間の一部に棟持柱に依存する特異な架構が見られ、上屋下屋形式出現以前の架構を想定する資料が得られた。 以上、2022年度の調査では、本研究課題が設定した初期民家の架構に関して、有益な調査結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、本研究課題は、2019年度から2023年度の5年間を研究期間として設定していた。当初から研究期間を長く設定したのは、寺社建築に関しては既に調査・作図などの作業が進展していたが、民家建築に関しては調査対象の絞り込みなどが十分とはいえず、資料収集を併せて実施しながら実地調査を行うことを想定していたためである。 研究内容のうち、寺社建築の実地調査・作図及び民家に関する資料収集は、2019年度に順調に行ったが、2020年度以降は新型コロナの感染が拡大したために、調査対象の所有者の了解を得ることや遠隔地への調査自体が困難となり、2020年度には実地調査は全く実行できず、2021年度も東京近郊の民家の予備調査を僅かに行えたに過ぎなかった。2022年度に関しては、前年度までの遅れを取り戻すべく、関東地方を中心に民家11棟の実地調査を行ったが、研究計画で想定している中国・北陸地方の実地調査は、いまだ実施しておらず、研究計画自体はやや遅れている状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題においては、既に実地調査候補物件のリストアップと資料収集は完了している。優先順位が高い調査候補は、奈良を中心とする近畿地方と中国山地に集中しており、この2地域から調査を実施していく予定としている。 実施にあたっては、実測スタッフの確保と共に、調査対象の所有者の承諾が必須であるので、効率良い調査が実施できるように、事前準備を徹底していきたい。
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Causes of Carryover |
本研究課題は、歴史的建造物を対象として、実地調査に基づく情報収集と作図を行うものである。しかしながら、研究期間の2及び3年度目に該当する2020・2021年度の2ヶ年間、新型コロナの感染状態が悪化したために、調査対象の所有者からの同意を得ること、及び遠隔地の調査自体が実施できる状況にはなかった。2022年度にはその遅れを取り戻すべく調査を行ったが、当初予定のほぼ1年分に関しては、いまだ実施できておらず、そのために次年度使用額が発生した。 2023年度は本来の最終年度であるため、既にリストアップ済みの対象について、調査を実施して、研究計画を完了したい。ただし、長距離移動と宿泊を伴う数人単位の調査チームの編成が必須であり、また調査対象の協力も必要であるので、実地調査の実行が可能となる状況を、慎重に見極める必要があることにも留意しておきたい。
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