2021 Fiscal Year Research-status Report
麗水地域在来民家の建築技術的変化の様相ー近代日本住宅の影響の視点からー
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19K04806
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
金 貞均 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (10301318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 在来民家 / 近代民家 / 伝統民家 / 近代日本住宅の構法 / 麗水在来民家の構法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国南部地方麗水地域の在来民家について近代期日本住宅の影響の側面から究明しようとする研究の一環として行うもので、先行研究により、麗水地域の近代民家の成立と実態について平面構成と寸法、屋根形式等の特徴を明らかにした。そして、開放的板の間の房(室)化や縁空間の拡大、近代建築材の導入、柱や間幅の変化などから日本との関係、つまり海洋文化圏の検証につなげる知見を得た。これらの成果を踏まえて本研究では、①麗水地域の近代民家の成立と実態について架構構成と寸法、部材断面寸法等を明らかにし、②近代以前民家からの時期別変化を究明したうえ、③日本の近代木造住宅技術-分析尺度-との比較分析を通して、麗水在来民家建築の技術的変化における日本の影響について総体的解明を目的とする。 前年度に引き続き今年度もコロナパンデミックで韓国麗水地域の集落調査が実施できず、充分なデータを確保できず、研究課題として関連文献の考察および一昨年度実施した調査結果を用いて更に分析を進めた。架構構成を特徴づける主要部分共通形式として、正面間数・退の構成(平面間のグリッド構成)、基本架構(縦断面架構)、側面中央柱・側面梁の形式(側面架構形式)を選定し、時期別3区分の近代期民家の特徴を明らかにした。その特徴は、①正面間数が3間から4間に変化し、平面及び断面架構構成で規模が大きくなった、②架構の平面寸法は退の側面間が大きくなった、③架構の断面寸法は宗桁の高さが全体的に高くなり、④部材を構成する断面は縦幅に変化があり、梁以外はほぼ一定の幅を維持する傾向が見られた。架構は建立後改変が難しい属性があり、寸法を包括する技術的ノウハウは実態を究明する効果的指標になると考える。これから追加調査のデータを加え、近代期日本住宅構法との比較・分析を通して、麗水近代民家の成立における日本の影響について明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に引き続き今年度も全世界に拡散した新型コロナウイルス感染症の影響により海外渡航ができず、予定していた韓国調査ができなかった。また国内における地域間移動も制限または自粛が要請され、資料調査等を順調に進めることができなかった。 こうした新型コロナウイルス感染症の影響に伴う科学研究費助成事業(科学研究助成基金助成金)の補助事業期間延長の特例を受け、補助事業期間の延長を申請し承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年度で、下記の研究を実施する。 ①在来民家の資料収集および現地調査の実施と分析:麗水地域選定集落の内、内陸集落と海岸地区集落の調査民家を対象に、現地調査(架構構成や各部材の高さ・断面寸法の確認等)を実施する。現地調査の際に居住者へのインタビューを行い、建築年と建替え時期、空間変更等について聞き取りする。また、調査民家の時期別特徴と技術的変化様相を分析する。 ②近代期日本住宅の構法と麗水地域在来民家の時期別構法特性の比較分析(総合分析):日本の近代木造住宅技術の分析尺度を用いた麗水在来民家構法の比較分析を通して、麗水近代期民家の成立における日本の影響について総合分析を行う。 ③研究の取りまとめおよび報告書作成:本研究の結果を総括し、報告書をまとめる。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き今年度も世界的な新型コロナウイルス感染症により海外渡航が原則禁止とされ、予定していた韓国調査が2年連続実施できず、航空運賃や滞在・宿泊費のほか、調査に伴う人件費・謝金等の執行が全くできなかった。また日本国内での地域間の移動の自粛などに加え、学会大会等がオンライン開催となり、移動のための交通費や滞在・宿泊費等の使用分も執行できなかった。次年度使用額は韓国民家調査や研究資料収集のための旅費及び謝金等に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)