2020 Fiscal Year Research-status Report
戦前の開墾地移住奨励事業における国・県の住宅像と戦後の農村住宅改善の連続性
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19K04811
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小沢 朝江 東海大学, 工学部, 教授 (70212587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 城治 郡山女子大学, 家政学部, 講師 (70734458)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 開墾地移住奨励 / 移住家屋 / 今和次郎 / 竹内芳太郎 / 耕地主任官会議 / 新興農場 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)茨城県新興農場については、茨城県立歴史館所蔵『新興農場綴』(昭和9年)、および茨城県農林技師・深作雄太郎の日記により、移住家屋の実態や今和次郎の関与を既に明らかにしている。本年度は、工学院大学図書館今和次郎コレクション所蔵の関連資料を調査し、新たに「新興農場從業員住宅設計図」「茨城縣新興農場從業員住宅設計説明書」等を確認し、竹内芳太郎が設計に関与したことが判明した。また「説明書」が今・竹内の設計趣旨書、『新興農場綴』所収「新興農場從業員住宅建築案」が県の提示した仕様書であり、土間への卓・椅子の設置や屋内作業場の計画は県の要望による一方、今・竹内が生活動線や利便性に配慮して工夫を加えたことなどが明らかになった。 (2)工学院大学図書館今和次郎コレクション所蔵「茨城県開拓課 標準農家住宅設計図」(昭和29年、竹内芳太郎設計)の制作背景を明らかにするため、茨城県立歴史館所蔵「開拓事業入植施設補助申請書綴」(昭和27-29年)を調査した。同事業は、農林省が都道府県・市町村等による移住家屋に対し1戸54000円以内を補助するもので、申請書綴により戦前の開墾地移住奨励制度との類似を確認できた。 (3)開墾地移住奨励制度について、府県の奨励規定の制定状況と交付実績を『耕地拡張改良事業要覧』等から分析し、さらに農林省が府県の耕地事業担当者を集めて年1回開催した耕地主任官会議の会議録により、制度に対する府県の要望や運用状況の相違背景を検討した。開墾地移住奨励制度の運用状況は、各府県の開墾施策の取り組みと経済状況による差が大きく、府県は国から移住者への直接的な補助と手続きの簡略化を要求する一方、農林省は県を通じた奨励の実施と、補助金の適正な運用を重視したが、開墾助成法の適用外の開墾地への対象の拡大、移住家屋の模範設計図案の提示は府県の提案に応えて実施したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、COVID-19感染対策の影響により、資料調査・現地調査の制限を受けたが、工学院大学図書館の史料調査については館のご好意により継続的に実施できた。また、本年度は既に収集している資料の整理・分析、研究成果の取りまとめを中心とし、査読論文3編を投稿し、掲載が決定した。不測の事態はあったものの、研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
竹内芳太郎の開墾地移住家屋に対する思想や実績を位置付けるため、戦前に関与した東北地方集団農耕地開発事業における移住家屋の実態を工学院大学今・竹内コレクション所蔵資料等から検討する。さらに、これを同時期に関与した同潤会による東北地方農山漁村住宅改善調査の標準設計および各県の先行する開墾地移住家屋と比較し、その設計手法と背景を考察する。 2021年度は最終年度にあたることから、これまでの研究成果を報告書として取りまとめる。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により出張が制限されたことで資料調査・現地調査が実施できず、旅費が支出できなかった。 代わりに、既収集資料の整理と、研究成果の発表に注力した結果、論文投稿料など「その他」の支出が予定より増加した。
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Research Products
(3 results)