2020 Fiscal Year Research-status Report
旧海軍施設を中心とした鋼材にみる建築部材の変遷に関する研究
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19K04813
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 僚子 日本大学, 生産工学部, 助教 (80736744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 利昭 日本大学, 生産工学部, 教授 (30612080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 技術史 / 鋼材 / 近代建築 / 八幡製鐵所 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年次は2019年度の解体時に収集した旧海軍技術研究所科学及電気研究場の部材について分析を行った。この建物は昭和5年竣工と考えられ、ほとんど鋼材に刻印は見られなかったが、一部で八幡製鐵所のロールマークが確認できた。また、解体時には、初年度に分析した旧海軍横須賀鎮守府倉庫の時より長め(約2.8m)に部材を裁断してもらい、コンクリートがついた状態のまま譲り受けて、なるべく状態の良い試験体がつくれるようにした。そのため、引張試験ではばらつきがなく、235 N/mm2を超え、引張強さが400N/mm2を超えた値であった。成分分析から平炉鋼と推定され、組織調査では、アングルおよびプレートのいずれもフェライト・パーライト組織で、清浄度は0.07~0.08%と通常の形鋼の0.20~0.35程度と比べて、清浄な鋼材と考えられた。 また、本来予定していた海外での調査は新型コロナウイルス感染症まん延のため行えなかったため、解体情報を得られた他の2棟について確認調査を行った。一つは昭和14年に建てられた4階建て(一部5階)の鉄骨鉄筋コンクリート造の旧横須賀海仁会病院で、石本建築事務所によって設計された建物である。建物は扇形のような平面形からくる緩やかな曲線のファサードが特徴的で、海軍の外郭団体の建物であるため、海軍の建物よりデザイン性のある建物となっている。もう一つは大牟田市の残る昭和13年の鉄筋コンクリート造で、三井染料工業所の染料工場として建てられたものである。柱を壁面から内側に離すことで、連続する窓を可能にして、採光面が多くなっており、各階の高さは6.5m以上ある上に、当時としても少ない7階建て建物である。いずれも、建物の詳細調査を考え、資料の収集も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、部材調査として、2019年度の解体時に収集することができた旧海軍技術研究所科学及電気研究場の鋼材について分析を行った。初年度の旧海軍横須賀鎮守府倉庫(昭和10年竣工)はデータにばらつきがみられたが、今回のデータはばらつきの少ないデータを得ることができため、近い年代の同じ海軍の建物として比較情報と有用で、今後さらに検討を進める。 それ以外の調査では、新型コロナウイルス感染症拡大のため、当初計画していた海外調査は行えなかった。また、国内の資料調査でも閉館されたり、入館に制限があったりして、予定していたようには進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の様子を見て、可能であれば、これまでに予定していて行えていない海外調査や八幡での調査を進めるとともに、新たに解体物件が出てきたときには調査を行う。また、引き続き、部材生産の背景を探るとともに、近代建築の部材について報告されたものの資料収集を行う。
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Causes of Carryover |
2年次は新型コロナウイルス感染症まん延のため、調査活動が難しい状況となった。計画していて行えなかった海外調査などは次年度に持ち越し、新たに調査した建物が解体となった時には部材採取などに費用がかかる。
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Research Products
(1 results)