2021 Fiscal Year Research-status Report
旧海軍施設を中心とした鋼材にみる建築部材の変遷に関する研究
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19K04813
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 僚子 日本大学, 生産工学部, 助教 (80736744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 利昭 日本大学, 生産工学部, 教授 (30612080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鋼材 / 近代建築 / 八幡製鐵所 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年次は2018年度に解体時に収集していた旧横須賀海軍工廠造機部仕上場について分析を行った。この建物は明治41年10月に竣工しており、これまでに収集・分析してきた昭和初期のものとは時期が異なるが、竣工当時の史料が防衛研究所戦史研究センター史料室に残っており、資料と現地調査から貴重な情報を得ることができる建物と考えられた。建物には仕様書のとおりの部材が確認でき、柱にはH形断面の鋳鉄が用いられているが、クレーン支柱や間柱には鋼鉄材が使用されていた。また、小屋組のトラスには錬鉄を形成した鍛鉄が使用されていて、斜材はT形、鉛直水平部材は丸棒と、部材にかかる応力負担を考えて使い分けている様子が見受けられた。海軍では明治末期に輸入鋼材による工場が建てられているが、その前には鋳鉄柱に鍛鉄の小屋組で建てられた時期があり、この建物は仕様書に官渡材による古材の記述が見られることから、その前の時期の部材構成で建てられた建物であると考えられ、海軍建築の変遷をおう上で参考となる建物となった。 現地調査としては、2年次に確認した三池染料工業所J工場について、建物所有者から提供していただいた図面資料をもとに現地にて計測を行った。また、この建物を捉える上で必要な、当時の鉄筋コンクリート造の工場建築に関する資料の調査も行った。 なお、本来予定していた海外での調査は新型コロナウイルス感染症の影響から今年度も行えなかったため、海外および国内の鉄鋼業や鉄鋼メーカーについて、社史や規格に関する資料収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
まず、部材調査として、2018年度の解体時に収集していた旧海軍横須賀海軍工廠造機部仕上場について分析を行った。この建物は、これまでに分析してきた昭和初期の建物と異なる明治末期に建造されており、鋳鉄や錬鉄が使用されていたため、比較分析はできないが、後の鋼鉄に移る前段階を考える上で貴重な資料となった。 それ以外の調査では、新型コロナウイルス感染症の影響から、計画していた海外調査は行えなかった。そのため、国内での資料調査を中心に活動した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症のため、2年次および3年次に計画していて出来なかった海外調査を行う。また、これまでに行ってきた部材分析および資料収集で得た情報をまとめる作業を行い、新たに解体物件が出てきたときには調査を行う。
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Causes of Carryover |
3年次も新型コロナウイルス感染症まん延のため、調査活動が難しい状況となった。計画していて行えなかった海外調査を次年度に持ち越す必要があり、調査した旧横須賀海仁会病院や三池染料工業所J工場のほか、新たに建物が解体された場合には調査に費用がかかる。
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Remarks |
日本大学生産工学部第54回学術講演会講演概要(2021年12月11日)
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