2022 Fiscal Year Annual Research Report
旧海軍施設を中心とした鋼材にみる建築部材の変遷に関する研究
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19K04813
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 僚子 日本大学, 生産工学部, 研究員 (80736744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 利昭 日本大学, 生産工学部, 教授 (30612080)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 近代建築 / 技術史 / 鋼材 / 八幡製鐵所 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、2年次と3年次に現地調査を行った旧横須賀海仁会病院(昭和14年、4階建て(一部5階))と三池染料工業所J工場(昭和13年、7階建て)について、解体工事が始まったため、採取した図面をもとに、建物の構造や材料について現地調査を行った。2棟は、用途は異なるが同じ年代の建物である。 まず、旧横須賀海仁会病院は軍人家族のための病院として、石本建築事務所によって設計され、建築時の青焼き図面が残っている。崖地に建つ、弧を描いた扇形のような平面形から、当時の構造計算技術の高さがうかがい知れる物件である。次に、大牟田市に残る三池染料工業所J工場は、当時では珍しい7階建ての工場であり、上の階から順次原材料を落としていくことで、動力なしで次の化学反応の工程へ進める染料工場であった。所有者所蔵図面には昭和9年から12年にかけての図が確認でき、当初2階建てでつくられたものを7階建てに増築した様子がうかがえる。また、三井文庫が所蔵する三井鉱山株式会社三池鉱業所旧蔵資料の中にも屋外階段増設工事資料が残っており、7階建てのL工場など同時期に同様の高層工場が鉄筋コンクリート造でつくられていて、それらも低層でつくった後に増築していたことがわかった。 本研究では、資料では知られていた鋳鉄柱と鍛鉄のトラスでつくられた明治末期の工場建築(旧横須賀海軍工廠造機部仕上場:明治41年)を実物としては初めて確認できた。また、構造としての考え方は鉄骨造でつくられた鉄骨鉄筋コンクリート造の昭和初期の庁舎建築(旧海軍横須賀鎮守府倉庫:昭和10年、旧海軍技術研究所科学及電気研究場:昭和5年頃)については、解体調査によって詳細を確認することができた。そして、鉄筋コンクリート造の病院庁舎(旧横須賀海仁会病院)や工場(三池染料工業所J工場)の解体調査から、昭和初期の海軍以外での建築技術について情報を収集することができた。
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Research Products
(2 results)