2020 Fiscal Year Research-status Report
修験道建築に関する基礎的研究 遺構調査と儀礼の場の復原的分析を通して
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19K04815
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
米澤 貴紀 名城大学, 理工学部, 助教 (40465464)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 修験道 / 修験道建築 / 神仏習合 / 儀礼の場 / 山岳信仰 / 宗教建築 / 近世社寺緊急調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、仏教と在地の山岳信仰や神道が習合して形成された日本独自の信仰である修験道が生み出した建築・空間の特質を探るものである。この「修験道建築」について、1)各霊山における分布と現在の状況、2)建物の外観及び間取り・空間構成、3)建物内での儀礼の場の構築のされ方、の3点を明らかにし、その特質を示すことを目的としている。 令和2年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響があり、活動の中心に据えていた現地調査が思うように出来なかったため、計画では次年度に予定していた羽黒山調査を先に実施し、また調査可能な新たな場所として葛城修験関連遺構(墓の谷行者堂、中川行者堂、粉河寺、根来寺、加太修験関連遺構)の調査を行った。 これらの調査より、修験道建築の外観・平面の特徴として、昨年度までに示した奥行きのあるかたちが多いことと関連して、出入口の位置、仏壇・祭壇の配置に特徴があることを明らかに出来た。すなわち、仏壇・祭壇は建物の一番奥に位置し、前方に礼拝・儀礼の空間を設けること、それに伴い、背面には扉を設けず、出入口は正面扉あるいは建物側面のみとし、いわゆる仏堂に比べると、限られた出入口となっている。背面に仏壇が寄り、前方に広く空間が展開する平面形態は近世の一般的な仏堂でも見られる特徴ではあるが、これまで調査した霊山の建物では規模を問わずにこの特徴を持つものが多く、出入口や窓などもあわせるとより閉鎖的であり、中にはこの特徴を備えた中世に遡る遺構もあることから、修験建築の特徴として良いと考えている。 また、各霊山における現状の施設の配置については、その信仰の継承のされ方と関わりがあると考えており、その検討に必要な情報を各調査にて収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけ、予定通りの現地調査が出来なかった。調査順序の入替や、調査可能な対象の追加を行ったが、この点で進捗状況はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った調査より、仮説の構築を進めている。実施できなかった分もあわせて現地調査を9月までに終える。また、文献研究も平行して進め、最終的な論考の作成・発表を行う。最終年度であるため、年度末に報告書を作成、関係者への配布を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大により予定通り現地調査が実施できず、調査順の入れ替え、訪問可能な調査地の追加を行ったため、差額が生じた。次年度使用額については、計画通り現地調査費として使用する。
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