2019 Fiscal Year Research-status Report
A historical study about architecture and urbanism of modern Inchon, south Korea through memories and records left in Nagasaki.
Project/Area Number |
19K04816
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
山田 由香里 長崎総合科学大学, 工学部, 教授 (60454948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 仁川・長崎居留地研究 / ハナ・ベネット・グラバー / 忠清北道・清州神社 / 旧仁川英国領事館 / 仁川外国人墓地 / 文化財修理設計技術者・井上梅三 / モダン仁川 / モダン長崎 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果は以下の四点からなる。 第一に、仁川において、仁川・長崎居留地研究会の現地調査と研究会を開催した(12/19-21)。 長崎居留地専門家のブライアン・バークガフニ長崎総合科学大学教授、中島恭子同非常勤講師とともに、トーマス・グラバーの娘ハナ・グラバー(1897-1938仁川在住、仁川で没)と夫ベネット(1891-1942仁川在住)の足跡を辿った。仁川では、元仁川開発研究院の金龍河博士、ソウル漢陽大学客員教授の冨井正憲博士、作家・翻訳家の戸田郁子氏の協力と御教示を得た。ハナとベネットが1914年以降に居住した旧英国領事館跡地、ベネット商会跡地、当時の仁川港の景観などを現地調査した。ハナの墓所(当初から2度移転)の現墓所と旧墓所の場所も確認した。官洞ギャラリーで研究会を開催し、総勢10名の参加を得、有益な情報交換ができた。仁川で資料収集を行った。 第二に、長崎歴史文化博物館の所蔵する倉場富三郎(トーマス・グラバー息子)アルバムを調査し、収録されている仁川・ソウル関連の写真の内容を分析した。映る建物の、現存の可否も確認した。 第三に、1941年に清州神社(忠清北道)を手掛けた文化財修理設計技術者・井上梅三(1864-1963)の資料調査と現地跡地調査を行った。跡地は戦後韓国仏教寺院になったが、参道・社殿敷地・展望所などの地形は残る。清州でも1920~30年代の近代建築が保存活用され、忠北文化館(忠清北道庁知事官舎)は1938年建設で棟札も確認できた。井上梅三資料は、約1300点(図面、写真、帳簿、書簡等)あり、1点ずつの確認と調書作成、日本国内の現存寺社の現状調査も行った。 第四に、長崎市鍛冶屋町の明治8年(1875)の町家(旧朝鮮貿易綿商)を調査し、御当主が保管する貿易台帳も調査した。初代はグラバーの秘書として渡米し、帰国後、朝鮮貿易綿商を立ち上げたという。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、長崎及び日本国内に残る仁川の建築と都市に関する史資料の調査を行い、史資料をもとに仁川で建造物・土木遺構の現地調査を行う研究計画であった。ところが、2019年度前半は、長崎県立図書館の移転にあたり、資料の閲覧が許されず、また同図書館郷土資料館の建替えにあたって対象時期の新聞などが閲覧できなかった。 どうなるかと思っていたが、トーマス・グラバー娘のハナ・ベネット・グラバーが仁川と長崎をつなぐ存在であることに気づいた。ハナを中心に調査を進めることが、結果として仁川と長崎の近代理解を深めることにつながった。グラバー家を中心とする居留地時代の長崎について長い研究実績をお持ちのバークガフニ教授と仁川で研究会を開催できたことは、大きな成果であった。 また、戦後に松江城天守の昭和修理に関わった文化財修理設計技術者・井上梅三の建築資料に、清州神社の資料が含まれていることがわかった。当時の神社図面が残るのは貴重で、仁川から離れるものの、同時代の関連資料として調査した。 そうするうちに、長崎でも旧朝鮮貿易綿商を営んでいた町家の調査をすることができた。 初年度の調査としては、非常に充実した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスによって、しばし韓国への渡航が難しくなった。また、国内の図書館や資料館の閲覧も制限されている。 一方で、本研究は、モダン仁川を通じて、モダン長崎の様相を明らかにすることも研究の大きな柱としている。2021年度に予定していた長崎の建築と都市の再検討を、先に実施することで対応したい。
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Causes of Carryover |
2020年3月に、東京における資料調査を計画していたが、新型コロナウィルス感染防止のため延期した。これが、次年度使用額が生じた理由である。今後、東京での資料調査が可能になったら、旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)