2019 Fiscal Year Research-status Report
アーツ・アンド・クラフツ運動と分離派建築会にみる近代建築草創期の「惑い」
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19K04820
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
杉山 真魚 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70625756)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アーツ・アンド・クラフツ / 分離派建築会 / 惑い / 両義性 / 葉形装飾 / グリーン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は資料の収集,19世紀後半から20世紀前半の英国ならびに日本の建築思潮に関わる著作や活動の整理,英国の建築教育や壁面装飾に関する言説研究を中心に行った。研究成果は以下のようにまとめられる。 1)研究体制の確立。2)資料収集:英国の装飾芸術史および日本の分離派建築会に関する資料を中心に収集した。3)世紀転換期の英国および日本の思想家・実践家の整理:本研究の礎となるように,英国についてはアーツ・アンド・クラフツ運動関連人物とウィリアム・モリスの思想との異同を体系化することを試み,日本については分離派建築会と都市関連著作という視点によって資料整理した(継続中)。4)英国の建築教育に関する言説研究:チャールズ・ロバート・アシュビーの建築家教育についての言説を記述分析した。5)英国の壁面装飾に関する言説研究:ウォルター・クレインとルイス・F・デイのデザイン思想を日本への眼差しに注目して比較分析した。6)分離派建築会の言説研究:大内秀一郎の思想を中心に解読を進めた(継続中)。7)「惑い」の検討:「両義性」「葉形装飾」「グリーン」「聖」「職人技術」「機械」「都市」などの概念とともに「惑い」の構造化を試みるとともに,日本建築学会や分離派100年研究会等において他の研究者と本研究の内容を共有・議論する機会を得た。8)研究成果の公表:モリスとアーツ・アンド・クラフツ運動について(『都市文化研究』),クレインとデイについて(『カルチュラル・グリーン』),「グリーン」について(『日本家政学会誌』),各1編の論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における初年度となる本年度,資料収集(ベイリー・スコット関連)のために年度末に渡英を予定していたが,感染症の影響で中止した。本年度,口頭発表の機会を多く得ることができ,研究の充実につながった。クレインの思想については研究計画時点ではモリスとの比較を行う予定であったが,同時代人のデイを含めて検討することができた。また,次年度に研究題材として扱うことを予定しているスコットの思想・活動について,渡英による情報収集は叶わなかったが,インターネットを通してThe Studio誌掲載の記事等を収集するとともに,予備的研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては,本年度に得られた知見をさらに精査するとともに,新規にベイリー・スコットおよびその周辺を対象とした研究に着手する。状況にもよるが,本年度実施できなかった海外での視察および資料収集を行い,研究の幅を広げたい。また,最終年度においては,個別の検討事項を横断する「惑い」の視点を総括する。
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Causes of Carryover |
海外渡航費として計上していたものを使用できなかった。次年度以降に渡英予定。
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Research Products
(15 results)