2020 Fiscal Year Research-status Report
アーツ・アンド・クラフツ運動と分離派建築会にみる近代建築草創期の「惑い」
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19K04820
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
杉山 真魚 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70625756)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | M.H.ベイリー・スコット / C.R.アシュビー / W.モリス / W.クレイン / C.F.A.ヴォイジー / 部屋 / 壁面装飾 / 田園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度より取り組んでいる19世紀末から20世紀初頭の英国ならびに日本の建築思潮に関わる著作や活動の整理を充実させるとともに,建築家ベイリー・スコットの言説および作品の解読を進めた。主たる研究成果は以下のようにまとめられる。 1)世紀転換期の英国の思想家・実践家の整理:アーツ・アンド・クラフツ運動関連人物による著作リストを作成した。ウォルター・スパロウやトーマス・デーヴィソンら,メディアと深い関わりを持つ人物を新たに加えた。2)英国の壁面装飾に関する言説・作品研究:①ウォルター・クレインのデザインの特質の一端を明らかにした。②The Studio誌におけるスコットの論点を軸に,C.F.A.ヴォイジーやウィリアム・モリスらとの共通点・相違点を探った。分析にあたり,島根大学の千代教授,日本大学の田所教授と研究協力体制を確立した。3)分離派建築会に関する展覧会:東京(2020年10月~12月,於:パナソニック汐留美術館)および京都(2021年1月~3月,於:京都国立近代美術館)において,「分離派建築会100年:建築は芸術か?」展の企画・開催に関わった。Ⅳ章「田園へ向かう『足』」という内容を中心に学術協力した。4)アーツ・アンド・クラフツ運動と都市計画に関する研究:デーヴィソンが関わったポート・サンライトの工業村について新たに調査を始めた。5)「惑い」の検討:「部屋(room)」という概念に着目し、装飾論と空間論をつなぐ視点の可能性を検討した。6)研究成果の公表:C.R.アシュビーとアーツ・アンド・クラフツ運動について(『日本建築学会計画系論文集』),モリス/ヴォイジー/ベイリー・スコットの壁面装飾について(『カルチュラル・グリーン』),各1編の論文にまとめた。分離派建築会については論考集と図録が刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における2年目となる本年度,資料収集(ベイリー・スコット関連)のために渡英を予定していたが,前年度同様,感染症の影響で中止した。渡英による情報収集は叶わなかったが,インターネットを通して前年度収集したThe Studio誌掲載の記事等を読み進めるとともに,分析内容についてオンライン会議システムを活用し各方面の専門家と意見交換する機会を極力多く持つように努めた。ベイリー・スコットについて,研究計画時点では予定していなかったモリスやヴォイジーとの比較を含めて検討することができた。また,次年度に総括する予定の「惑い」の視点についても予備的考察を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる次年度においては,本年度に得られた知見をさらに精査するとともに,個別の検討事項を横断する「惑い」の視点を総括する。状況にもよるが,これまで実施できていない海外での視察および情報収集を行い,研究内容を補足したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は,本年度予定していた英国への渡航が感染症により実施できなかったためである。状況にもよるが,次年度,渡英および英国からの資料調達のために使用する。
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Research Products
(8 results)