2022 Fiscal Year Annual Research Report
アーツ・アンド・クラフツ運動と分離派建築会にみる近代建築草創期の「惑い」
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19K04820
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
杉山 真魚 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70625756)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動物模様 / 植物模様 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続きC.F.A.ヴォイジーに関する研究を進めるとともに、近代建築草創期の「惑い」の視点について装飾における動物の模様化という問題を取り上げた。本年度の主たる研究成果は以下のようにまとめられる。 1)C.F.A.ヴォイジーの言説・作品研究:父親のC.ヴォイジーによる有神論の思想との関わり、住宅における「単純」と「平穏」という特質の意味、壁紙デザインにおける「幅」という考え方などを分析し、装飾において倫理と意匠を往還する概念が主題化されていることを明らかにした。2)アーツ・アンド・クラフツ運動における動物模様の展開:ウィリアム・モリスによる捺染木綿「いちご泥棒」や毛織物「孔雀と竜」を糸口として動物の模様化について、植物模様との異同を示しつつ、構成、運動性、象徴性、物語性という4つの論点を整理した。3)「惑い」の検討:これまでに明らかにしたアーツ・アンド・クラフツ運動における装飾と空間の両立という問題に加えて、装飾表現の多様性(植物と動物)について考察した。4)成果の公表:C.F.A.ヴォイジーの壁紙デザインについて(『日本建築学会大会学術講演梗概集』、世紀転換期英国の動物模様について(『カルチュラル・グリーン』)、各1編の論考にまとめた。 研究期間全体を通じた研究成果として、最終年度に「ウィリアム・モリスの両義性とアーツ・アンド・クラフツ運動」という論考を発表する機会を得た(共著『装飾の夢と転生』)。本研究課題が主題とする「惑い」の視点について、自然/歴史、過去/未来、都市/田園、中産階級/労働者階級、アート/クラフトという5つの対概念を提示し、それらが大地、時間、環境、民衆、制作という包括的概念に統合できることを論じた。これらに加えて近代建築初期の動向として装飾/空間、原始性/近代性、植物/動物などの対概念とその内実を明らかにした点に本研究の意義があると考える。
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Research Products
(7 results)