2021 Fiscal Year Research-status Report
大工棟梁林兵庫関連史料と建築遺構に関する基礎的研究
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19K04825
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
伊藤 洋子 (渡辺洋子) 追手門学院大学, 上方文化笑学センター, 客員研究員 (40327755)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 林兵庫 / 史料 / 宮大工 / 寺社建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
林兵庫は代々妻沼(現在の熊谷市妻沼町)の地にあって宮大工棟梁として活躍した家である。林兵庫の名は歓喜院聖天堂の再建造営で知られるようになる。寛保2年(1742)妻沼聖天堂の本殿を総棟梁として建立した正清は、幕府作事方大棟梁平内応勝の二男で林家に入り、その息子である正信は父が宝暦3年(1753)に他界すると後を継いで聖天堂の相の間、拝殿を宝暦10年(1760)に完成させた。以後、正義、正尊、昌道、正啓、松五郎、金吾と続き、昌道は聖天堂の貴惣門を建立した。林兵庫については歓喜院での活躍が大きくクローズアップされる一方で、埼玉県を中心に数多くの寺社を手がけており、それらの全容はあまり分かっていない。本研究では建築設計を営んでいた林金吾氏が大切に残した同家の史資料(絵図・文書)を調査し、林兵庫一門の建築技法を体系的に明らかにするものである。 林家文書の所有者である林千恵子氏がフランスから帰国された2021年2月に連絡をいただき、2月27日28日の両日で林家にある史資料の写真撮影をほぼ全部実施することができた。 2021年8月9日10日、特に軸装の建築図面等、重要な史料の再撮影に林千恵子氏宅を訪問したが、その際、親戚で林兵庫の屋敷を引き継いだ妻沼林家の方にお会いすることができ、さらにその後、そちらに残る史資料の撮影も許可されて実施した。 史資料調査により「三峯山仁王御門木取帳」「秩父郡三峯山仁王御門仕様寸法覚」を入手できたので、現存遺構との比較検討をするため、代表作である三峯神社随身門(旧仁王門)の詳細な実測調査を再度実施した。成果は日本建築学会の2022年大会論文、および国際学会の16th SEATUC Symposiumで発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
林兵庫家史料の現在の所有者である林千恵子氏がコロナ禍にもかかわらずフランスから一時帰国され、2021年2月末に所有されている林家文書のほぼすべてを写真撮影できた。さらに2021年8月には林兵庫の屋敷を引き継いだ妻沼林家にも史資料が残されていることがわかり、それも別途撮影させていただいた。 そのため林兵庫史料は林千恵子家・妻沼林家の2軒分となり、これまで以上に量が増えたため、科研は1年延長していただき、2軒の膨大な林家史資料を現在整理している。これまで知られなかった林兵庫の作品なども明らかになりつつある。 年度末に数量上の整理は概ね終了したので、研究計画に基づいて、史資料に書かれた建築と現存遺構の関連を含めて、今後の研究進展に期待したい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、林千恵子家史料と妻沼林家史料の2軒分の史資料撮影をさせていただき、現在、数量上の整理・リスト化はほぼ終了した。さらにカテゴリー別分類を精査して内容把握につとめる。また行政が過去に実施した史料リストが発見されたので、現在のリストと比較して、散逸してしまったものについても把握する。 さらに史資料に書かれた建築と現存遺構の関連を精力的に追いかけ、現存しているのに評価されていない建築や状態の良くない遺構について所見をまとめる。 最終的に林千恵子氏は文書史料の公的機関への寄託を希望しておられ、かつ同家にある軸装の 絵図や聖太子像、笈、太子講史料は別途美術工芸品(および附)として文化財指定の可能性がある。そのため熊谷市教育委員会、埼玉県教育委員会と連絡を取り合い、貴重な史資料 美術工芸品の保存についても進められるように計画したい。
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Causes of Carryover |
本来は2021年度に史資料整理を終えて、かつ現存遺構の現地調査を実施し、それらの成果発表を行って予算を執行する予定でいた。 しかしながら思いがけず、林兵庫家史料がもう1軒の家(妻沼林家)にもあると分かって、写真撮影による収集を許可・実施させていただき、2軒となって量の増えた資料整理に時間を要した。 それも概ね2021年度末には終了したので、2022年には史資料にある建築の現存遺構の実地調査を行い、それらの成果発表を実施したいと考えている。
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Research Products
(2 results)