2021 Fiscal Year Research-status Report
文化政策的視点から見た「有機的建築」理論に関する研究
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19K04826
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
横手 義洋 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (10345100)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 有機的建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍につき、海外調査が叶わなかったため、主に文献資料の解読と分析を進めた。以下に、現時点までに整理できた概要を記す。 20世紀初頭にアメリカが世界に発信できた建築思想である有機的建築の理論は、主としてプレーリー・スクールの建築家たちによって展開された。ルイス・サリヴァンは、建築の形態論として有機的理論を展開したことに特徴があり、その理論的主張はかならずしも建築装飾の存在を否定するものではなかった。サリヴァンに影響を受けたフランク・ロイド・ライトは、有機的建築についてもっとも雄弁であったが、その主張はけっしてわかりやすいものではない。自然と建築の関係、空間の流動性に関する主張は、建築理論として理解して良いものだろうが、一方で、民主主義国家アメリカを体現するのが有機的建築であるといった主張もあり、建築理論のレベルを超えた政治的判断を含む場合もある。これに関して、同じくサリヴァンに影響を受けた建築家クロード・ブラグドンが、幾何学的形態論を展開しながら、最終的に民主主義国家にふさわしい芸術を語ることにどの程度の共通性があるのか、あるいは、まったく別種のものなのか、目下、考察の途上にある。その他のプレーリー・スクールの建築家の言説を含め、広い視野で検討する必要を感じている。 以上、文献資料の分析・考察のほか、地域の伝統的形態を有する建築の可能性、今後のあり方についても、多角的に検討を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響が継続し、本来進めるはずだった海外における実地調査がいっさいできなかったことで、さすがに研究全体の進捗に遅れをきたすこととなった。海外実地調査を後ろ倒しにして、文献調査やオンライン・リサーチ、リモート会合による情報収集によって研究計画の軌道修正を図っても、2年間まったく海外実地調査が叶わないという状況はきわめて深刻である。今後も海外実地調査ができないという状況が続くようであれば、研究計画期間の延長を願い出るほかないように感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症拡大の状況を注視しつつ、まずは国内の実地調査を、可能であれば、海外における実地調査を実施するつもりで、できるかぎりの下準備を行っておきたい。昨年度同様、建築物については航空写真やライブ映像等のインターネット情報を駆使して可能な限りベースとなる資料作りを継続する。また、デジタル化されていない資料についても海外研究者の協力を得て入手できるよう努力を続けている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、過年度と同様で、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、当該年度に予定していた海外研究調査のすべて、国内研究調査の一部が実施できなかったことによ り、旅費支出、調査関連の物品支出がなくなったことにある。 感染症の状況次第ではあるが、現地調査の目処が立たない場合、遠隔による資料入手、遠隔による研究会等の割合を増やすことで、可能な限り当初計画 した作業内容を実施し、目標とした成果をおさめられるように努力をすることは過年度と同様である。
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