2021 Fiscal Year Annual Research Report
前近代日本における住宅の寿命の実態ならびに寿命をめぐる住宅観に関する研究
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19K04829
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 勝也 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80202290)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 住宅 / 寿命 / 前近代 / 住宅観 |
Outline of Annual Research Achievements |
平安京における貴族の住まいの寿命(存続期間)ならびに、寿命をめぐる住宅観について、以下の研究成果を得た。 まず平安~江戸末期の内裏の寿命を通覧した。平安宮内裏では10世紀後半以降、寿命は著しく低下し、11世紀はさらに一層低下。両者を通しての平均値は6.3年。いっぽう中世以降の準内裏は約30年、近世内裏は前半約17年、後半約52年であった。かように古代における短命が際だった。 つぎに、平安時代9~12世紀貴族邸の寿命について、一つに、11~12世紀の平安中後期における貴族邸の寿命の平均は約15~16年。二つ目に、さかのぼって10世紀は平均約11~14年(参考値)で、11世紀以降と大差はない。三つ目に、9世紀の後院の寿命はいずれも50年超えで、平均値は約60年(参考値)。四つ目に、寿命50年超えの屋敷は10世紀にはじまる貴族邸にみられ、11世紀には100年超えの屋敷もある。しかし12世紀にはじまる屋敷の寿命は最長50年程度。 鎌倉時代13世紀にはじまる屋敷の寿命についても成果を得た。第一に、京内では12世紀までの傾向をほぼそのまま継承。第二に、京外ではむしろそれより短く平均約8年の屋敷が一定程度存在。しかし京外では第三に、100年超の事例あり。ただしそれらは御堂をともない、寺院化する。以上、寿命の視点からみて11世紀京内の花山院と東三条第は異質の存在であった。 さらに寿命をめぐる住宅観について、まず短命化の主因は火災であることを確認した。そのうえで火難から決して免れない厳しい居住環境から醸成されるのは、長寿命を住まいに期待しないという、ある種の諦観、永続性の放棄という住宅観であった。それを裏打ちするのは、解体・移築が旧宅ではなく竣工間もない新しい住宅であること、またこのように本来不動産であるはずの住宅を動産的にみなし扱うことこそ、前向きの住宅観として評価できることを論じた。
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Remarks |
令和3年10月~令和4年3月、京都御苑「閑院宮邸跡収納展示館」の展示リニューアル(環境省自然環境局京都御苑管理事務所、令和4年(2022)4月オープン)の公家町VRおよびパネル展示について監修・協力を行った。
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Research Products
(4 results)