2023 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・バイヨン期のクメール建築の建築的特徴に関する研究
Project/Area Number |
19K04830
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
大林 潤 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (40372180)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | クメール建築 / 西トップ遺跡 / テラス遺構 / ポスト・バイヨン期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カンボジア・アンコール地域のクメール建築において、13~15世紀のアンコール王朝末期(ポスト・バイヨン期)の遺跡を整理し、それぞれを比較研究することにより、この時期のクメール建築の特徴を明らかにすることを目的とする。 2022年度は、西トップ遺跡東テラスの発掘調査と、アンコール・トム内のプリア・ピトゥ遺跡の調査をおこなった。その結果、西トップ遺跡では東テラスの下層に参道とみられる遺構が残存する事、プリア・ピトゥ遺跡では、テラス外装の石材・形状が西トップ遺跡中央祠堂前身ラテライト基壇と非常に似通っていることが明らかとなった。 本研究全体では、アンコール遺跡群内の遺構の資料収集と、ポストバイヨン期に建設されたとされる西トップ遺跡を中心に建築的調査をおこない、また同年代の具体的事例として、アンコール・トム王宮内のテラス遺構および、プリア・ピトゥ遺跡との比較をおこなった。研究当初、資料収集で得られた図面から各年代の建築の平面的特性等を比較検討する計画であったが、新型コロナウイルス蔓延のため、研究期間内での実測調査が可能な遺跡のみに変更した。 西トップ遺跡については中央祠堂基壇外装の内部に存在する前身ラテライト基壇の全貌が明らかとなり、前身ラテライト基壇については、これまで10世紀末の建立とされていたが、14世紀に非常に近い年代まで降ることが判明し、同遺跡の変遷について新たな知見を得た。また、下層遺構を新たに確認し、西トップ遺跡の復元に資する資料を得ることができた。類例調査では、平面形や石材の形状について西トップ遺跡との比較をおこない、ポストバイヨン期の建築事例とその特徴に関する考察をおこなった。
|