2020 Fiscal Year Research-status Report
超軌道速度流れ場の高信頼予測実現へ向けた非平衡モデルの進展
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19K04842
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
荻野 要介 高知工科大学, システム工学群, 講師 (90586463)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 衝突輻射モデル / 高エンタルピー流の数値計算 / 原子・分子過程 / 輻射熱輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
大気圏突入時に宇宙機が経験する過酷な空力・輻射加熱環境における熱化学非平衡性や輻射熱輸送のモデル化に関して本研究では、従来法の代替となり得る実物理過程により即した新たなモデル化を創設・提案することを目的とする。具体的には、既存の熱化学非平衡モデルで簡略化されてきた、流体内部における量子力学的状態 (振動・電子励起状態) ごとの質量保存則を直接解析する。それを圧縮性 Navier-Stokes 方程式と連立し、さらに輻射熱輸送方程式と結合させることで極超音速流動場のより正確な解析を試みる。超軌道速度飛行体まわりの非平衡モデル開発と流動場予測用高精度数値計算コードを構築し、次代の世界基準に足り得る高信頼手法の提案を目指す。本研究ではこれまでに、従来法の非平衡モデルにおいて平均化されていた励起状態ごとの密度分布を衝突・輻射遷移方程式によって直接計算し、電子励起状態ごとの質量保存を導いた。さらに輻射熱輸送との結合コード開発を行い、輻射光線の追跡計算と同時に非平衡物理モデルの複雑化と高精度化、さらに壁面入射する輻射スペクトル解析コードの実装にも成功した。構築した本計算コードを用いれば、熱力学平衡を仮定した輻射スペクトル同定などが行われている極超音速流れ研究の現状を乗り越え、より精緻な輻射熱輸送の数値予測が実現可能となる。NASA Ames研究所に配備されたアーク加熱風洞気流の数値解析を実施し、供試体へ入射する輻射スペクトルの計算と比較検証し、従来法よりも優れた精度を得ることに成功した。また前期解離反応など、未実装であったが風洞固有の特徴から卓越する遷移化学反応の追加も行い、より高信頼なモデルに近づけた。これまでに得られた数値計算に関する研究成果をまとめ、オンライン開催された国際会議と国内学会にて数件の講演発表を行い報告議論を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で構築した統合計算手法では圧縮性 Navier-Stokes 方程式と衝突・輻射遷移方程式、輻射輸送方程式をすべて結合した。非平衡な励起状態分布を衝突・輻射遷移方程式によって計算し、物理モデルを複雑化することで理論的な観点から Park モデルと呼ばれる世界標準と考えられている従来手法に対し更なる高度化を図った。また、輻射発光・吸収強度を空間全域で追跡し熱輸送を膨大な数値計算コストのもとではあるが、実際に解けるようになったことから流れ場と励起分布へ直接フィードバックも可能となった。世界的に見てもこれまでにない結合計算コードを構築することに成功した。構築した計算コードの比較検証、また更なる高精度化のために実験との一対一比較し、他の研究施設に配備されている極超音速流れの試験風洞を対象に研究を進めた。しかしながら当初予定では、今年度購入した分光計測器を用いて計測し数値解析結果との直接比較を実施することを望んでいたが、コロナ禍にあって実行できなかった。またその分光計測器は英国製品であったため製造ラインの遅れや運輸のために要した時間が積み重なり、半年以上かかって受け取ることができた。他機関との連携を急ぎ、また感染拡大の状況を注視しながら今年度内の研究計画を実行する。
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Strategy for Future Research Activity |
物理モデルの複雑化の犠牲として長大な数値計算時間が必要となるが、現状自由に利用できるクラスタ型計算機を保有運用できているため、やや遅れてはいるものの十分な成果を期待できる。その他の計算コードの拡張や整備なども並行して進めていく予定である。 2020年度に購入した分光計測機器を、アーク加熱風洞や極超音速流を利用できる衝撃風洞などの実験設備へインストールし、流れ場からの発光を計測することで数値計算結果との比較検証を実施する予定である。ただし、コロナ感染拡大の渦中にありながら、風洞施設を保有する外部機関との連携は可能なのか、差し迫った大きな問題である。そのため現在、所属大学内にて実施できる代替案を検討している。具体的にはプラズマトーチを購入し、高速気流は再現できないものの、簡易に発光プラズマの計測を分光実施できる。ゆるやかなプラズマ流れの数値計算と輻射スペクトルを調べる予定である。出来うる限りの予測とその対応をしつつ速やかにまた柔軟に研究を進め、本申請課題の完遂を目指す。
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