2019 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の翅の形態的特徴が非定常空力特性に及ぼす効果の研究
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19K04844
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 正人 金沢工業大学, 工学部, 教授 (70462124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 大輔 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (60507903)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低レイノルズ数 / 風洞実験 / 非定常翼 |
Outline of Annual Research Achievements |
飛行する昆虫は、羽ばたき運動による高い運動性能と、突風などの外乱にも対応できる飛行能力を有し、その翅は平面形だけでなく断面形状においても特有の形態を持つことが知られている。この翅には、定常翼としての空気力だけでなく、羽ばたき運動による非定常空気力も作用する。しかし、一様流中で運動をする翼の二次元翼や三次元翼の非定常空力(空気力学)特性の風洞実験は、翼の慣性力が大きいことから極めて計測が困難でその実験結果は少ない。そこで、今回はこれらの問題点を解決できる独自の風洞実験方法を考案した。具体的には翼模型を運動させるのではなく、風洞をヒーヴィング運動させることで翼に流入する気流方向を変化させて翼に作用する非定常空気力を測定するものである。この方法は風洞を瞬間的に動かすことで翼に突風を与えることも可能である。また、昆虫の翅に相当するレイノルズ数を想定しているため、風洞装置は非常に小型化できる点も本装置の実現が可能になった要素である。したがって、本研究の目的は、これまでに得られていない昆虫サイズの翼の非定常空力特性を独自の風洞実験方法によって計測し、同時に数値流体力学(CFD)解析と比較することで、昆虫の翅の形態的特長とその非定常翼空力特性の関係を明らかにすることである。現在、周期的な運動を与える風洞装置と、瞬間的な動きを行う風洞装置を別々に製作して研究を進めており、特に一様流中でヒーヴィング運動を行う二次元翼の非定常空力特性については一応の成果が得られた。今後はさらに研究を進めることで、一様流中で運動する三次元翼の非定常空力特性や、突風を受ける翼の応答特性について新たな知見を得たいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目に予定していたヒーヴィング風洞装置が完成し、基本的な二次元翼の非定常翼空力特性の実験を実施した。同時に流れの可視化にも成功した。問題点もいくつか出てきたが、ヒーヴィング運動する翼の空力特性として興味のある結果が得られたため、学会に論文を投稿し現在審査中である。また、当初は一つの小型風洞を考えていたが、突風を再現するための風洞も同時に製作を進め、こちらも完成しており並行して実験を進める予定である。また、CFD(数値流体)解析においては、以前から進めてきた本研究の基礎となる定常翼解析で成果があり、低レイノルズ数においてギザギザした二次元薄翼に生じる渦を捉えることに成功した。現在、非定常翼にも応用して研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒーヴィング風洞装置による二次元翼非定常空力特性の実験をさらに進めると共に、三次元翼非定常空力特性についてもその現象を明らかにしていく。また、飛行中の突風を想定した瞬間的に運動する風洞装置も完成しており、突風時の翼の応答性についても明らかにしていく予定である。同時にCFD解析も進め、実験結果と比較していく。
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Causes of Carryover |
今年度は風洞装置の製作のための物品費に費用を充てた。当初予定していた動ひずみアンプ等の機器は、現在別の計測に用いているものと共用することで実験を進めることが可能であることが分かった。その反面、流れの可視化では現在自作した装置では性能的に不十分であったため、さらに性能のよい装置を購入することで可視化実験に成功した。以上のように、本実験装置は他に例がないため試行錯誤を繰り返しており、次年度使用額が生じている。実験装置は完成しており、一応の成果が得られたため、今後はこの実験を拡張していくための物品の購入に充てていく計画である。
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