2019 Fiscal Year Research-status Report
サンドイッチパネルの面板と心材間の破壊じん性評価試験の理論解析法の確立
Project/Area Number |
19K04845
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉田 啓史郎 金沢工業大学, 工学部, 教授 (50345089)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サンドイッチ / 面板 / 心材 / はく離 / 破壊じん性 / 理論解析 / Vlasov法 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンドイッチパネルの面板と心材間の耐はがれ強さ(破壊じん性)を実験的に評価する方法としてサンドイッチSCB試験が近年注目されている.本研究では,「弾性床上のはりモデル」にVlasov法を組み合わせた、サンドイッチSCB試験のための新たな理論解析法を構築した.具体的には,Vlasov法をサンドイッチSCB試験片に適用した場合の定式化を実施し,その求解過程で必要となる収束計算のアルゴリズムを明確にし,それに基づく計算プログラムを作成した. 次に,構築した理論解析法による結果を有限要素解析による結果と比較するため,有限要素解析モデルの作成法を決定した.本研究ではサンドイッチパネルにおける面板と心材間のはく離き裂を解析対象としており,これを変位法に基づく標準的な有限要素解析ソフトウェアを用いて精度良く解析するには,き裂先端での応力特異性に配慮する必要がある.そこで,き裂先端でのメッシュ分割が異なる数種の解析モデルを作成し,メッシュ分割に依存せず十分に精度が高い結果が得られるメッシュ分割法を決定した. そして,構築した理論解析法による結果を有限要素解析による結果と比較し理論解析法の妥当性を検証した.面板および心材の材料定数や寸法(板厚),はく離き裂長さなどの解析パラメータを広い範囲で変化させても理論解析法による結果が有限要素解析による結果と非常に良く一致し,本研究で提案する理論解析法の妥当性を確認した.また面板と心材が共に等方性材料の場合のみならず,炭素繊維強化プラスチック面板の場合にも当該理論解析法が適用可能であることも確認した.さらに,当該理論解析法で導入する変形の仮定のため,はく離が生じた領域の心材の影響を定式化に含めない方がより妥当な解が得られることを明らかにした. 上記の成果の一部を国際学会発表および査読論文として公表し,研究の妥当性については概ね高評価を得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初の計画は次の通りであった. サンドイッチSCB試験の理論解析法として,「弾性床上のはりモデル」に注目し,これにVlasov法を適用した新たな理論解析法を構築する.構築した理論解析法による結果を有限要素解析による結果と比較し理論解析法の妥当性を検証する.特に面板および心材の材料定数や寸法(板厚),はく離き裂長さなどの解析パラメータを広い範囲で変化させて妥当性を確認する.面板と心材が共に等方性材料の場合のみならずこれを炭素繊維強化プラスチック面板の場合にも適用可能にする. 本年度は,おおむね上記の計画通りに順調に研究が進展した.具体的には,Vlasov法をサンドイッチSCB試験片に適用した場合の定式化を実施し,その求解過程で必要となる収束計算のアルゴリズムを明確にし,それに基づく計算プログラムを自作した.そして,構築した理論解析法による結果を有限要素解析による結果と比較し理論解析法の妥当性を検証した.その結果,面板および心材の材料定数や寸法(板厚),はく離き裂長さなどの解析パラメータを広い範囲で変化させても有限要素法による結果と非常に良く一致する解が得られ,理論解析法の妥当性を確認できた.また,定式化に大きな変更を加えずとも炭素繊維強化プラスチック面板の場合にも適用可能であることを有限要素法による結果と比較し確認した. 上記の成果の一部を国際学会発表および査読論文として公表し,研究の妥当性については概ね高評価を得られたと考えており,現在までの研究の進捗については順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
サンドイッチパネルの面板/心材間の破壊じん性評価試験では,熱残留応力の影響が顕著になる場合があることが報告されている.面板と心材を一体成形してサンドイッチパネルを製作し,常温(20℃程度)で実験を実施する場合,パネル成形時の温度(200℃度程度)と実験実施時の温度の温度差による熱応力が生じた状態となるため,この影響を考慮できるように理論解析法を改良する.熱応力の影響を理論解析に含めることが難しい場合は,候補となる面板,心材の材料および試験片寸法など数ケースについて数値解析による検討を加える. また近年,3Dプリンタに代表されるAdditive Manufacturing等により,材料特性が位置により変化する心材(不均質な心材)の開発が進められている.本研究で開発しているVlasov法を適用した新たな理論解析法は,心材の弾性特性が位置により変化する場合も取り扱うことができる解析法である.定式化の一部見直しとそれに伴う計算プログラムの部分的な修正で,この理論解析法を不均質な心材の場合にも適用できると考えられる.本研究で開発する理論解析法の有用性を高めるためにも,不均質心材への拡張を検討する. 本年度の研究活動を通して,理論解析の一部に含まれる収束計算を実行するためのプログラミング環境が良く整備され,それを使用するノウハウも蓄積されてきている.リサーチアシスタントに有限要素解析ソフトウェアを使用した研究補助を依頼する予定であるが,ソフトウェアの使い方に習熟してきた様子である.今後も研究が順調に進展する予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により投稿論文の準備に少し遅れが生じ、投稿論文英文校閲料等として使用する予定であった助成金を本年度使用せず、次年度に使用することとした。
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