2020 Fiscal Year Research-status Report
ニューロモーフィックなアプローチが拓く極限探査における着陸航法技術の研究
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19K04854
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
福田 盛介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (50332151)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニューロモーフィック / 画像航法 / 太陽系探査 / スパイキングニューラルネットワーク / イベントカメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、有人探査が困難で無人機が本質的に活躍する「極限探査」の自在な実現のために、生物的な機能を再現あるいは模倣する「ニューロモーフィック(neuromorphic)」なセンサやプロセッサを探査機の航法技術に導入し、画像処理等のアプリケーションを実装して、高速応答性や低消費電力などの観点で従来技術とは不連続かつ革新的なメリットの獲得を目指している。脳神経のふるまいを模倣したニューロモーフィックプロセッサの動作が、非同期なイベントベースのニューラルネットワークとして実行されることに鑑み、2019年度に、深層学習に代表される人工的なニューラルネットワーク(ANN)を、ニューロモーフィックプロセッサで実行可能なスパイキングニューラルネットワーク(SNN)へと変換する手法を提案した。これをさらに発展させ、2020年度は、再帰ユニットや疑似勾配といったアイデアを適用することにより、SNNにおいて直接的に学習を実施する手法を開発した。これらの手法の有効性は、地形相対航法の重要な要素であるクレータ識別を例として、シミュレーションにより検証された。そこでは、生物の視神経を模し、対象の輝度の変化を非同期的に出力するニューロモーフィックセンサ(イベントカメラ)と組み合わせた検証も行っている。その結果、ANNに対する精度比較とともに、ネットワーク中のニューロンの発火回数から、別途研究開発が進められているニューロモーフィックプロセッサで実行した際の動作が推算され、従来の計算機に比して極めて低い消費電力で実行可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施計画において、ニューロモーフィックセンサとニューロモーフィックプロセッサを各々航法技術に適用した研究を行い、さらに可能であれば、それらの成果を統合することをエクストラサクセスとしているところ、イベントカメラを入力としたプロセッシング(クレータ識別)の手法の開発において、着実に成果を創出できていることなどによる。
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Strategy for Future Research Activity |
ニューロモーフィックプロセッサを調達・入手できるかを見極める。これについては、各国で開発競争となっており、国外数社から近日中のリリースがアナウンスされているものの、未だ市場に購入可能品は出回っていない状況である。開発した手法の最終評価をニューロモーフィックプロセッサ上で実施するか、一般的な計算機上でエミュレートするかについて、FY2021上半期の早い段階で決定し、3年間の研究を取りまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
ニューロモーフィックプロセッサの市場リリースを待っており、その調達に関わる費用を留保しているため。2021年度上期にこの動向を見極め、リリースされない状況の場合には、代替の検証環境の構築に予算を使用する計画である。
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