2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a mathematical model to simulate berthing maneuver assisted by tugs
Project/Area Number |
19K04859
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐野 将昭 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (40582763)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 船舶工学 / タグボート / 離着桟 / 港内操船 / 操縦運動 / 自動化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,ハーバー・タグの優れた運動性能に基づく将来的な港湾内支援操船の自動化の可能性に着眼し,その制御方式を開発・検証する為のプラントモデル(タグの支援操船に関わる運動モデル)を構築し,支援操船の計算環境を整備する事である。2年目には,次の通り研究成果を得た。 ●岸壁影響の表現法の検討(実施計画書,項目b関連): 岸壁影響を定式化し,着岸/離岸時の主船体流体力モデルを提案した。 ●旋回式推進器の推力/横力モデルの構築(同c): タグは360度首振り可能な旋回式推進器を有し,同推進器に作用する推力と横力は運動モデルの入力値となる。そこで首振り角毎に広範なプロペラ作動状態で推進器を単独曳航し,首振り角,プロペラ荷重度,流体力の詳細な関係を明らかとした。別途,推進器位置に流入する流れの平均的な流向と流速について,船体斜航角に応じた変化を明らかとした。一連の解析結果に基づき,操縦運動時,任意の首振り角の推進器に作用する推力/横力の推定モデルを構築した。同試験は,昨年度の課題であった計測機器の配置不具合を改修し,ノイズ対策を施した上で実施した。 ●連携運動モデルの構築(同d): 任意隻数のタグが本船を押航する状況,曳航する状況(緊張策を1本のピン結合部材で仮定)を定式化し,それらを複合したモジュール型運動モデル(行列方程式)を提案した。要素行列を組み替える事により,時々刻々変化する各タグの支援状態に柔軟に対処する事ができる。また複数タグによる本船の制御則として、疑似逆行列を用いた推力配分の定式化を示した。2隻のタグ(暫定データ・運動モデル使用)による押航支援の計算では,タグが相互に連携した運動を取る事で,大型船を所要の運動状態で押航できる事を示した。また着桟支援シナリオでは,連続的に支援状態が切り替わる状況を計算できる事を示した。いずれも試計算段階であり,運動モデル等は今後更新予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「タグの支援操船に関わる運動モデルの構築と運動計算」に対して,初年度に引き続き要素研究の成果が集まりつつあり,「おおむね順調に進展している」と考える。研究実施計画の項目と照らし合わせて,2年目迄の進捗状況をまとめる。 【a】本船の低速操縦運動モデルの構築(1年目): 初年度に,主船体流体力を表現するモデルを運動状態に応じて円滑に切り替える「連結型モデル」を構築した。港湾内操船で直面する広範な運動状態時の主船体流体力をロバストに計算可能である事を確認した。またバラ積み貨物船については,浅水域含めて操縦流体力データを保有済みである。 【b】岸壁影響の調査(2年目): 現状,有用なデータは本学で先行的に実施していた実験結果に留まるが,その結果に基づき、浅水域において垂直岸壁に向かって横移動する主船体が受ける横力を解析し,岸壁までの距離と横力増加の関係を明らかとした。そして所要の実験係数を同定し,岸壁影響を考慮した主船体流体力モデルを提案した。運動計算を通じて,水深に応じて着桟横移動速度が低下する事を確認済みである。 【c】タグの運動モデルの構築と運動計算(1,2年目): 拘束模型試験を通じて,運動モデル構築に必要な流体力データを計測済みである。特に旋回式推進器の流体力特性を詳細に分析し,同推進器の推力/横力を推定する為の精緻なモデルを構築した。 【d】連携運動モデルの構築と運動計算(1,2年目): 複数隻のタグが本船を押航する状況,曳航する状況,両者が混在する状況を再現し,時々刻々の状況変化に対応できるモジュール型運動モデルを構築した。また押航,曳航の連携支援操船を計算できる事を示し,簡易な着桟シナリオの運動計算も実施した。試計算段階の為,今後,上記研究成果を組み合わせる事で,本研究目的を達成したい。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスによる行動制約から水槽試験計画を見直した事も一因して,当初予定していた複数船種(本船)の流体力データを一式揃える事が難しくなった。今後は本船として,肥大度が大きくタグの支援が最も難しいと思われるバラ積み貨物船を想定して検討を行う。主な研究の推進方策について列挙する。 【c】タグの運動モデルの構築と運動計算: 拘束模型試験により必要な流体力データは一通り計測済みである。タグの主船体流体力モデルとして初年度に構築した「連結型モデル」を採用し,2年目に構築した推力/横力モデルを組み合わせる事で,タグ単独の精緻な運動モデルを構築する。そして横移動,斜航前進,その場旋回といった支援操船で有用となる2基の旋回式推進器を駆使したタグ特有の基本運動の再現計算を行う。 【d(1)】プラントモデルの構築: 本船には,実施項目aとbの成果に基づく岸壁影響込みの低速操縦運動モデルを,タグには項目cで構築した運動モデルを適用する。それらを項目dで構築してきたタグと本船の連携運動モデルに組み込む事で,最終的に,任意隻数の押航タグ,曳航タグによる本船の離着桟操船に対応可能な精緻なプラントモデル(タグの支援操船に関わる運動モデル)を構築する。 【d(2)】離着桟を想定した運動計算: 構築したプラントモデルで再現される仮想環境内で,様々なシナリオに則り,複数のタグによる本船の支援操船のシミュレーション計算を実施する.制御系の自由度が多い冗長性のある問題となる為,各タグへの要求推力,タグの各推進器への推力配分は,疑似逆行列制御方式による解法を試みる。水深,本船の行き足,岸壁への進入角度,風による外乱等,タグの支援操船に及ぼす各種影響のケーススタディを行い,状況に応じたタグの支援操船について考察する。
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