2019 Fiscal Year Research-status Report
コネクタレス海洋探査システムの開発に向けた基礎研究
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19K04876
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
石渡 隼也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 技術主任 (60834645)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 朝哉 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 主任技術研究員 (10359127)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非接触伝送 / 伝送効率 / 伝送コイル / 海中コネクタ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、コネクタレス海洋探査システムが対象とする、海洋探査機に搭載する耐圧容器蓋に取り付けられるコネクタに代わる非接触伝送用のコイルについて、①同径コイル間の距離を変えての一対一伝送、②異なる径コイル間の一対一伝送、③並列配置による二対一および一対二伝送、といった様々なコイル配置関係において、気中海中における非接触伝送シミュレーションおよび実験を実施し、基礎的な伝送特性を評価した。 ①のケースでは、コイル間距離変化による共振周波数の変化はほぼ無く、ひいては伝送効率への影響も無いことがわかった。特に周波数が低くなるにつれて電磁波の波長が長くなることからコイル間距離の影響は小さくなる。このことから、周波数帯域に無関係な電力伝送においては、低周波数帯を選択することで高い伝送効率を実現することが可能であるといえる。一方、高周波数(今回のケースでは20MHz)では、コイル間距離5mmで80%、20mmで40%程度まで伝送効率が低下することがわかった。通信信号伝送においては、できる限りコイル間距離を狭める配置が必要である。 ②のケースでは、相対するコイルの中心軸をずらして伝送評価を行った。結果として小径コイルが大径コイルの円周内で相対している場合、伝送効率の低下が見られず、コイル配置の物理的制約は極端に厳しくないことがわかった。一方、直列共振を起こす周波数においては回路のミスマッチングが起こり、伝送特性が悪化するため、伝送周波数選定に留意する必要があることがわかった。 ③のケースでは、②同様に伝送周波数選択に留意する必要はあるが、基本伝送特性は伝送が行われる一対一のコイル関係にのみ依存し、並列配置による伝送特性への影響がないことがわかった。実装時、耐圧容器蓋には複数のコイルを並列配置することが想定されるため、実用上非常に有用な知見を得たと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年に実施予定としていた「単段・多段および直列・並列を組み合わせた複雑な構成」および「コイル間距離を変化させた」ケースにおいて、シミュレーションおよび実験を行い、基本的な伝送特性を把握することができた。これらは、コネクタレス海洋探査システムの実装段階において想定される耐圧容器蓋上とケーブル先端に配置される、相対するコイルの位置関係の評価を行ったことを意味し、令和元年度の研究成果により、実装段階に必要な貴重な知見を当初の予定通り得ることができた。 また、このような相対するコイル間の伝送特性に関するシミュレーション、実験で得られたデータおよび結果考察による知見は、次年度実施予定の、海中機器の耐圧容器に用いられる材質が周囲に存在するケースでの伝送特性評価における、極めて重要な基本特性データとなり、次年度のシミュレーションおよび実験結果評価のためのリファレンスデータになる。 以上のことから、現時点での進捗状況は次年度以降の研究を遂行するに順調に進展している状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、コネクタレス海洋探査システムが対象とする海洋探査機に搭載する海中機器用耐圧容器に使用されている材質であるチタン、アルミニウム、ステンレスによる伝送効率への影響を、シミュレーション及び実験にて評価する。さらに伝送効率への影響を抑制する対策案についても、シミュレーションおよび実験により改善効果を検証する。なお、対策案としては、ステンレスより導電率が高く損失が小さい銅箔や、コイルから生じる磁束を収束し伝送効率の低下を抑制できるフェライトシートをコイルと材質の合間に設ける方法が挙げられる。効果検証と合わせて、フェライトシートの厚みによる伝送効率評価の変化の検証なども実施し、実装に向けて必要な知見の収集を行っていく。
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