2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバル株式運用のための包括的資産運用モデル確立に向けた研究
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19K04888
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 零 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40756376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
枇々木 規雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30245609)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 投資戦略 / 非正規性 / テキストマイニング / 議決権行使 / コーポレートガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新興国、特に中小型株式を含めたグローバル投資を実現するために(1)グローバル市場の特性を踏まえたポートフォリオ最適化、(2)投資適格性を評価するためにグローバル市場での信用力評価、(3)ガバナンス評価の大きく3つの分野の研究を行うものである。 2019年度は主に投資戦略についての研究を行った。1つ目は新興国中小型企業を含めたグローバル市場の株式は収益率分布が歪んでいる可能性が高いため、正規性を大きく外れた収益率分布を持つ株式への効率的な投資手法について研究を行った。具体的にはRachev Ratioというパフォーマンス指標に着目し、Rachev Ratioを高めるようなポートフォリオ構築方法を提案して、その有効性をグローバル市場のデータを用いて検証した。その結果、先進国の各国だけでなく、新興国市場においても他の投資手法に比べ有効性が高いことを実証した。 2つ目はテキストマイニングを用いて企業の魅力度を計測する研究を行った。近年、テキストマイニングは様々な手法が提案されており、資産運用への適用も行なわれている。ただし既存研究の多くはニュースなどが出た場合の株価への短期的な影響を調査するものであり、中長期的な株式投資への有効性についてはあまり検証されていない。本研究では会社四季報という媒体に着目し、そこに含まれている肯定語、否定語の数で企業の魅力度を測る方法を提案した。実証分析の結果、国内株式市場において中長期の株式投資戦略で高い有効性が確認できた。 また投資適格性を判断するためのガバナンスの研究として、取締役選任議案における議決権行使についての研究を行った。議決権行使は株主が企業に対して意見を述べる重要な手段である。本研究では議決権行使がガバナンスに与える影響を国内市場で調査し、賛成率が低い企業はその後業績やガバナンスの改善を行うことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2019年度にはグローバル市場の特性を考慮した投資手法の開発を行った。さらに中長期的な投資手法で利用できるテキストマイニングを使用した投資手法の研究も行った。これらの研究は論文をとしてレフリー付学会誌に受理された。またグローバル市場の特性を踏まえた投資手法の研究については、国際学会でも報告を行っている。 さらに3点目の研究として、企業のガバナンスに関する研究についても行っており、これについても論文としてレフリー付学会誌に掲載されている。また国内の学会で発表も行った。 テキストマイニングとガバナンスに関してはグローバル市場のデータがないため国内市場での分析となったが、現在テキストマイニングについては外国株式市場でも分析を進めている。 これらの研究を含め様々な運用戦略についての研究を進めることで、予定していた以上に資産運用の効率化を実現できる可能性があり、当初の計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度も行った投資戦略に関する研究を継続し、グローバル市場での利用に耐えうるいくつかの投資戦略を検討する予定である。具体的にはグローバルのサプライチェーンデータ、テキストデータなどを使った分析を検討している。これらの研究は既存研究と異なる企業データを用いた投資戦略の研究であり、従来から行われている企業財務や業績予想データを用いた投資戦略とは異なる特性を持つ重要な戦略になることが期待できる。 また信用リスクモデルの開発として、企業財務から機械学習手法で企業の倒産判別を行う研究も進めている。グローバル市場に投資する場合、企業の信用力を事前に把握することは投資において重要な役割を担っている。近年成長している機械学習手法を用いて倒産判別を行うことで、従来より高い精度での信用力評価が可能になることが期待できる。
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Causes of Carryover |
(理由) 物品購入を一部翌年度に見送ったため。 (使用計画) 本研究用の備品購入費の一部として使用する計画である。
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Research Products
(18 results)