2020 Fiscal Year Research-status Report
グローバル株式運用のための包括的資産運用モデル確立に向けた研究
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19K04888
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山本 零 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (40756376)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
枇々木 規雄 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30245609)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 信用リスク評価 / 入出金情報 / 機械学習モデル / サポートベクターマシン / 投資戦略 / 企業間ネットワーク情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は新興国、特に中小型株式を含めたグローバル投資を実現するために(1)グローバル市場の特性を踏まえたポートフォリオ最適化、(2)投資適格性を評価するためにグローバル市場での信用力評価、(3)ガバナンス評価の大きく3つの分野の研究を行うものである。 2020年度は主に信用力評価についての研究を行った。1つ目はグローバル市場では国により会計基準が異なることや粉飾決算の影響を踏まえて、通常用いられる財務情報による信用力評価ではなく、銀行の入出金情報から企業の信用力を計測するモデルの構築を行った。具体的には企業の入出金情報を集約し、Bayesian Hierarchical Modelを用いて信用力を表現するモデルを構築し、国内の中小企業データでその有効性を検証した。その結果、標準的な信用リスクモデルより高い推計精度が得られることを確認した。 2つ目は機械学習モデルとして実務でよく利用されているサポートベクターマシン(SVM)の改良を行い、倒産判別に関する実証分析を行った。具体的には通常SVMの判別面が線形であるのに対し、判別面を半正定値2次曲面へ拡張を行った。国内上場企業のデータを用いて検証を行った結果、線形判別SVMに比べ高い信用リスク推計精度が得られることを確認した。 また2019年度に引き続き投資戦略に関する研究として、企業間ネットワーク情報を用いた投資戦略を提案し、グローバル株式市場でその有効性を検証した。具体的には企業の業績はカスタマー企業からサプライヤー企業に影響することを利用し、カスタマー企業とサプライヤー企業間で現れる株価の関連性を用いて投資を行う方法を提案した。グローバル株式市場で検証を行った結果、提案戦略は従来の投資戦略に比べ高い有効性を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、2020年度にはグローバル市場でも使用可能な2つの信用力評価手法の開発を行った。さらにグローバルの企業間関係を使用した投資手法の開発を行い、グローバル市場の投資で有効性が高いことを確認した。本研究の成果は2つの信用力評価手法の研究は研究論文として投稿中であり、投資手法の研究はレフリー付きの国際ジャーナルに受理されている。 またサポートベクターマシンの研究に関しては、国内学会で2回の発表を行い、2021年度には国際学会で2件の発表を予定している。これらの研究成果より、当初の計画は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続きグローバル市場での投資戦略、及び信用力評価手法の研究を継続し、グローバル市場での利用に耐えうる投資スキームを確立させる予定である。 具体的にはグローバル市場での投資戦略として、テキストデータを用いた投資戦略を検討する予定である。テキストデータは従来から用いられている財務指標や業績予想を用いた投資戦略とは異なる特性を持つものであり、新しい投資手法として重要な役割を担うことが期待できる。 また信用リスクモデルとして、最新の研究論文であるAUC最大化モデルによる信用力評価モデルを改良し、より効果的な信用リスク評価モデルを開発する予定である。投資の安全性を確保する上で投資企業の信用力を把握することは重要な要素になるため、本テーマも重要な役割を担うものである。さらにこれまで提案した成果を統合してグローバル投資としてどの程度の有効性があるかを試算する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症のため国際学会への参加などが中止となったため未使用額が生じた。未使用分は次年度分析用コンピューターなどに使用し、それ以外は予定通り使用する予定である。
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