2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical data analysis and modeling of the emergence of supply network complexity with a specific focus on firms' strategies of diversification and exploration/exploitation
Project/Area Number |
19K04893
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鬼頭 朋見 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50636107)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多角化 / 戦略 / サプライネットワーク / 創発 / 時系列データ / ネットワーク科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複雑な企業間サプライネットワーク構造の創発原理を、サプライヤ企業の多角化・集中戦略に着目して追究することを目的としている。そのために、初年度はまず、時系列実データについての情報収集とデータの選定をおこない、適切であると判断した複数のデータベースからのデータ抽出と、それらのデータの紐付け・統合をおこなった。 また、多角化・集中戦略に関する経営学的理論やケーススタディからの知見を収集した。その結果、サプライヤが何を造るかに関しての多角化については、既存指標が複数あり、それを応用可能であるが、誰と取引するかという顧客の多角化に関しては、ほとんど先行研究が存在しないことが明らかとなった。本研究では、サプライネットワーク構造の創発原理を興味の中心に据えている。そのため、サプライヤが誰と取引しているかは不可欠な情報である。また、何を造るか?と誰と取引するか?は、本質的には不可分であると考えた。なぜならば、サプライヤ企業の資源は有限であり(実際、中小~零細企業が多く存在する)、製造にも取引にもコストを要するため、資源配分の観点から、両者を独立に最適化することはできないからである。この発想をもとに、今年度は、製造ポートフォリオと顧客の多角化・集中戦略を統合的に測る指標を、既存指標を応用展開することで提案した。その指標を、独自に収集したデータに適用することで、サプライヤ企業の統合的多角度およびその時系列変化を、定量的に分析した。この成果は、年度内に国際学会で発表した。また、現在、国際学術論文を執筆中である。 以上のことから、本プロジェクトの初年度は、概ね順調に研究を進めることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
元々目的としていた、データの選定やデータ収集は、概ね完了した。当初、複数の産業についてのデータを収集することを予定していたが、なかなか良いものが見つからず苦戦した。しかし、既にある程度所有している自動車産業データを基軸に据え、その産業に関わっている企業の情報を、複数のデータベースから収集することで、結果的にはよりリッチなデータベースを構築することができた。この作業はまだ完全には完了しておらず、2年目も継続して行う必要があるため、その観点では予定より遅れている。しかし、情報源の特定は済んでいるため、今後問題なく進められると考えている。 また、データ収集で多少遅れがあるものの、多角化戦略の指標についての既存知見の収集は順調に進み、既に新規指標の案が浮かんだため、今年度はその指標立案もおこなった。これについては、年度内に国際会議で発表することができ、現在は国際学術論文も執筆中であるため、計画以上に進展したと言える。この指標をさらに発展させるためには、実データもより充実させる必要があるため、2年目は両者を並行して進めていきたい。初年度の活動成果により、2年目にやるべきことも明確化されたため、本プロジェクトは総じて順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、企業戦略に着目しサプライネットワークの創発をモデル化することを目指すものである。そのため、データをそのまま分析し知見を得る、という類の研究ではなく、戦略を把握しモデル化するために、どのようなデータをどの粒度で収集すべきかを的確に判断する必要がある。よって、当初はまずデータを整備することを計画していたが、今後の方策として、データ整備と多角化戦略の既存知見収集および新たなモデル構築を、同時並行で進めることとする。 当面の目標としては、まず現在執筆中の国際学術論文を完成させ投稿する。その過程で、既存の多角化戦略理論の知見を体系化し、本研究のポジショニングを明確化する。その上で次のステップとして、提案した新規の多角化指標を、どのようなデータがあればより改善できるかについて検討する。それを元にさらなるデータ収集をおこない、一方で指標の拡張・サプライネットワーク全体のモデルへの展開を計画する。
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Causes of Carryover |
データ資料を購入予定であったが、当初想定していた資料ではない資料に、必要な情報が掲載されていることが判明した。その資料の一部を、共同研究者から提供してもらったため、その分のコストが不要となった。なお、次年度には資料を購入する必要が生じる可能性がある。 また、ワークステーションを購入予定であるが、先に論文執筆を始めたために、タイミングが2年目にずれ込んだ。これについては、既に機種の選定が済んでおり、2年目の予算が使用可能になり次第、購入する。 新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、次年度以降に予定していた海外出張が実施できるかどうかは不透明である。投稿予定の国際会議の多くは、延期またはオンライン化が予定されている。その分の費用は、学術論文の出版費用に充てたい。また、本研究で構築するモデルをオンライン上で試せるようなツールを開発することも検討する。
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