2019 Fiscal Year Research-status Report
ルーラル地域に「なじむ」連携型モビリティサービスの提供方法に関する研究
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19K04898
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60457819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | モビリティサービス / ルーラル地域 / MaaS / 地域公共交通 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,自家用車の運転を継続する生活と中止する生活との間に,物理的・心理的ギャップが生じやすいルーラル地域(人口規模が小さく,社会経済主体が低密度に分散する地方中小都市や農山村地域)を念頭に,連携型モビリティサービス(相乗りや定額運賃など多様なサービスを導入した乗用タクシーや自家用車による輸送)の導入により,これらのギャップがどこまで緩和されるかを明らかにすることが目的である。 研究初年度は,連携型モビリティサービスのうち,自家用有償旅客運送と道路運送法の許可・登録不要の形態について,国土交通政策研究所の研究プロジェクトと連携して網羅的に調査し,類型化を試みた。また,乗用タクシーの定額サービスに着目し,その輸送効率を定量的に評価したほか,利用者の活動機会向上の可能性について,福島県内の複数事例を対象に調査を行った。 その結果,乗用タクシーの運賃割引とは独立して,定額サービスの導入が既存ユーザーの利用頻度を増やすほか,近距離(概ね2~3km以内)に限定した運用では,増収にも結びつく可能性が示唆された。また,定額サービスの乗用タクシーを片道のみ利用するユーザーも多く,自家用車による送迎や路線系の公共交通サービスと組み合わせて利用されることが多いことも明らかにした。一方で,MaaS構築で注目される「サブスクリプション型(月額乗り放題)」の価格設定を行った場合,ルーラル地域では運賃が節約できる利用者は少なく,高齢者が主体の利用環境では受容されにくいことも示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,連携型モビリティサービスの類型化を試みたほか,乗用タクシーの定額サービスや相乗りに着目し,高齢者の活動機会向上の可能性や輸送効率の点から評価を行うことができたため,順調に研究を進めることができた。 但し,台風19号による水害発生により,当初予定していた,連携型モビリティサービス導入地域の住民を対象としたアンケート調査の実施を見送らざるを得なかったが,ホスト自治体の選定や調査票の設計自体は完了しているため,「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年目は,前年度に見送った,連携型モビリティサービスが導入された地域を持つホスト自治体でのアンケート調査を実施することになる。ホスト自治体の選定や調査票の設計自体は完了しており,円滑に実施できる体制にあるが,本報告執筆時点において,新型コロナウィルス(COVID-19)感染症拡大防止の観点から「接触機会の低減」が社会的な要請となり,外出を含めた活動機会を切り下げざるを得ない状況にある。そのため,平常の活動実態を計量することが困難になるケース,あるいは,当面の「平常」が外出頻度を切り下げたケースになることが想定されるため,社会経済状況を見極めながら,適切と思しき時期に調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
台風19号による水害発生により,研究初年度に計画していた,連携型モビリティサービス導入地域の住民を対象としたアンケート調査の実施を見送らざるを得なかったため,執行残が発生した。当該調査は,新型コロナウィルス(COVID-19)感染症拡大による外出機会の制約による影響を見極めたうえで,研究二年目に実施する予定である。
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