2020 Fiscal Year Research-status Report
ルーラル地域に「なじむ」連携型モビリティサービスの提供方法に関する研究
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19K04898
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
吉田 樹 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (60457819)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 連携型モビリティサービス / ルーラル地域 / 高齢者 / ギャップ / 公共交通 / COVID-19 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国のルーラル地域では,自家用車の運転を継続する生活と中止する生活との間に,物理的・心理的ギャップが存在していると考えられ,運転を中止した高齢者は,活動機会の低下が懸念される。本研究は,相乗りや定額運賃など,多様なサービスを導入した乗用タクシーや自家用車による助け合い輸送に着目し,これらを連携型モビリティサービスと位置づける。そのうえで,ルーラル地域の生活者(とりわけ高齢者)が自家用車の運転を中止することで直面するギャップの所在を確認し,連携型モビリティサービスを提供することで,これらをどこまで解決できるかを明らかにすることで,ルーラル地域に「なじむ」連携型モビリティサービスの提供方法を示すことを目的としている。 二年目となる2020年度は,自家用車の運転を中止した高齢者が直面するギャップの所在を確認するためのアンケート調査を山形県山形市を対象に行い,1,000人余りの有効回答を得た。同市においては,過年度の科研費(課題番号:25709043)においても類似内容の調査を行っており(2015年度),回答者自体は異なるものの,経年変化を確認できるようにした。その結果,自家用車の運転を中止することで,外出頻度が減少するとともに,外出自体がおっくうになる傾向となることが確かめられた。しかし,日本国内でも感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による「外出自粛」や「公共交通利用への忌避」も反映される結果となり,それらの影響を考慮した分析を行ったところである。土木計画学研究発表会や交通工学研究発表会に投稿中の論文で,現時点の成果を報告する予定である。また,自家用車を活用した連携型モビリティサービスに関しては,その費用構造に関する共著論文が土木学会論文集に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により「外出自粛」や「公共交通利用への忌避」が見られる現況にある。そのため,ホスト自治体における,乗用タクシーや自家用車の「相乗り」に関する実証の開始が遅れている。また,利用対象者となる高齢者へのヒアリング調査も見送らざるを得なかった。以上の点から「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19による「外出自粛」等のアナウンスは,三年目となる2021年度も継続されており,年度内に飛躍的な改善が図られるかは,いささか不確実である。 一方で,二年目に実施した山形市でのアンケート調査では,COVID-19禍で公共交通利用に不安を抱える層は,路線バスやデマンド交通など乗合公共交通の利用頻度を減らした分,自家用車利用に転換する傾向が見られたものの,乗用タクシーの利用頻度の変化は「不安」の有無による違いは見られず,連携型モビリティサービスの一つである,定額運賃の乗用タクシーは「ニューノーマル」の地域社会で選ばれやすくなるという,新たな仮説を得ることができた。 そこで,2021年度は,乗用タクシーの定額制サービスの実証を進めてきた郡山市安積町の利用者ヒアリングを進めるほか,ホスト自治体である山形市,埼玉県秩父圏域などでも類似した実証を行う予定であることから,郡山市安積町のケースとの比較を行う予定である。また,自家用車を活用した送迎については,ホスト自治体のうち,埼玉県飯能市や福島県会津若松市などで既に進められており,利用者へのアンケート調査を行う予定である。以上の調査を早期に行うことで,研究進捗の遅れを取り戻すことになり,研究の取りまとめにむけた作業に移行することができると考えている。
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Causes of Carryover |
二年目(2020年度)に実施予定であった,ホスト自治体におけるアンケート調査がCOVID-19の影響により,山形市のみの実施となった。また,連携型モビリティサービスの利用者に対するヒアリング調査も延期となった。三年目(2021年度)は,二年目に実施できなかった調査をできるだけ早期に行う予定としており,そこに次年度使用額を充てる計画である。
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[Book] 地域公共交通政策論2021
Author(s)
吉田 樹(宿利正史・長谷知治 編)
Total Pages
260
Publisher
東京大学出版会
ISBN
978-4-13-042152-2