2019 Fiscal Year Research-status Report
移動シェア問題に対するニューラルネットワークを用いたオンラインアルゴリズムの開発
Project/Area Number |
19K04907
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
松浦 隆文 日本工業大学, 先進工学部, 准教授 (70579771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 貴幸 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (80579607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シェアリングエコノミー / 相乗りタクシー / シェアサイクル / タブーサーチ / 組合せ最適化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,渋滞緩和,CO2削減,移動費の節約が期待される相乗りタクシー,シェアサイクルが普及するために解決すべき問題を最適化問題として提起し,高速なオンラインアルゴリズムを開発することである. 国土交通省と都内タクシー会社が行なった相乗りタクシーの実証実験の結果,同乗者に対する不安が原因で,相乗りの成功率が約10%と低いことが明らかとなった.相乗りタクシーの普及には,同意を得やすい乗客同士をマッチングさせることが不可欠である. 相乗りタクシーの有効性を示した従来の数値実験では,マッチングされた乗客同士は,必ず同乗する仮定で行われており,現実の状況に即していない.そこで本年度は,顧客の希望にそったマッチングを実現するための数値実験を行なった.具体的には,乗客に属性を与え,乗客が指定した属性を有する乗客のみしか相乗りができないという制約のもと,相乗りタクシーの有効性を検証した.数値実験の結果,従来のタクシー運用形態よりも,相乗り型のタクシーは多くの顧客を安い運賃で送迎でき,かつ,タクシー会社の利益が向上することを確認した. シェアサイクルの課題は駐輪ポートの自転車を効率的に再配置することである.本年度は,静的な自転車再配置問題に対し,実行不可能な近傍解へも遷移することで,従来法よりも高性能なアルゴリズムの開発に成功した. 以上の研究成果に関して,2019 International Symposium on Nonlinear Theory and its Applications,2020 RISP International Workshop on Nonlinear Circuits, Communications and Signal Processingなどの国際会議で発表を行った.また,電子情報通信学会の各大会や研究会などで研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,研究計画書の研究計画に沿って,おおむね順調に研究を進めている. 相乗りタクシーに関する「顧客の希望にそった同乗者のマッチングとタクシーの経路決定に関する研究」は,当初の予定より早く着手し,研究成果をあげることができている.従来研究では,乗客の同乗者への要望は考慮せずに相乗り相手を決定していたが,本研究では,乗客の要望に沿った同乗者のマッチングをおこなった.乗客の要望が加わることで,相乗り可能なタクシーは減るが,従来のタクシー運用形態よりも,タクシーを利用できる顧客数は増加し,タクシー会社の利益が向上することを明らかにできている.また,より多くの乗客を輸送できるマッチング方法の研究を進めている. シェアサイクルに関しては,自転車台数が変化しない静的な自転車再配置問題の制約条件が厳しいために,従来法では実行可能解が存在するにも関わらず実行可能解を発見できない,実行可能な近傍解を構築できず,解探索が途中で停止するといった問題があった.この問題を解決するために,一部の制約条件を削除し,それらの制約条件に対する違反量を重み付きのペナルティとして目的関数に加えたソフトな制約付き自転車再配置問題を提案した.この問題を解くことで,元の問題の実行可能領域と実行不可能領域の解探索が可能となる.その結果,全ての問題例に対し,実行可能な巡回経路を構築できた.また,制約条件に対するペナルティの重みを探索状態に合わせて動的に調整する手法を提案し,更なる性能向上に成功した. これまでの研究成果に関しては2件の国際会議での発表,また国内口頭発表を通じて公表している.更に,制約条件の厳しい最適化問題において,その制約を削除し違反量をペナルティとして目的関数に付加することで,元の問題の実行可能解を得る手法に関しては,現在,原著論文にまとめており投稿予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,制約の厳しい静的な自転車再配置問題に対して,実行可能領域と実行不可能領域を探索することでより良い解を探索する戦略,解空間を探索するためにタブー探索法を用いたアルゴリズムを提案した.今後はこの手法をニューラルネットワークを用いた解法へと拡張する.その後,動的な自転車再配置問題に対するニューラルネットワークを用いた手法の性能評価を行う.静的な問題では「総移動距離の最小化」を目的関数にしていたが,研究計画に記載している通り,目的関数を「自転車を利用したいのに自転車がない,返却したいのにそのスペースがないという機会の最小化」として行う. 相乗りタクシーに関しては,乗客に属性を付与し,乗客が指定した属性を有する乗客同士しか相乗り相手としてマッチングができないという制約のもと,有効性を検証する数値実験をおこなった.その結果,相乗りタクシーの有効性を示せたが,乗客に与えた属性はまだ1つである.乗客が同乗相手を指定する属性を増やすことで,より乗客に安心感を与えるマッチングを行うことができる.そこで,まず,属性を増やした大規模な相乗りタクシーの数値実験を行う.しかし,属性が増えることで,相乗り可能な乗客候補が減少するため,相乗りの機会が減り,従来のタクシー運用形態に近ずくことは容易に想像できる.そこで,数値実験により,従来のタクシーの移動距離を重視した乗客のマッチング,経路決定手法の問題点を明らかにし,新たな手法を提案する予定である.
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Causes of Carryover |
数値実験に用いる高性能計算機が当初の予定より安価に購入できたこと,年度末に開催される国際会議と国内会議の口頭発表が中止となり,現地に行くまでの旅費が不要になったためである. 研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.
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