2019 Fiscal Year Research-status Report
幼児の動的挙動を再現するための理論モデルに関する研究
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19K04923
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
大田 慎一郎 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (90550393)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 幼児 / 振動 / 理論モデル / ベビーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児の理論モデルを構築するためには,振動入力時における幼児の挙動を詳細に把握する必要がある. そこで,本研究の目的は,安全に振動測定実験が可能なベビーカー着座時における幼児の動的な挙動を明らかにすることである. 突起乗り越しにおける加速度波形において,背もたれの有無を胸部について比較すると,背もたれありの場合はX軸(前後方向)が大きく振動し,なしの場合はZ軸(上下方向)が最も大きく振動した.これは,背中を背もたれにつけた状態であれば上下方向の振動は背もたれに吸収されやすくなるためと考えられる.また,背もたれありの場合は,後輪が突起を乗り越したあと,すぐに収束せずに残っている.これも同様に,背もたれがあることによって胸部の振動が吸収されることで,頭部のみが振動し続けることがわかった.この実験結果は計12名の被験者でも同様な傾向を示した.また,モーションキャプチャを用いた幼児挙動の解析においても突起乗り越し時に回転運動が生じていることが明確になった. 次に,凹凸路面走行実験の周波数解析結果において,背もたれの有無を比較すると,胸部Z軸方向について背もたれありの場合は8.8Hz付近で共振し,背もたれなしの場合は7.5Hzで共振した.背もたれありのほうが頭部,胸部ともに共振周波数が高くなった.背もたれにつけると剛性が高まり,ばね定数が大きくなるため共振周波数が高くなると考えられる.また,胸部X軸方向について見ると,計12名の被験者の測定結果から,胸部は8.8~10.5Hz付近で回転運動をしていることがわかった.成人の人体胸部は6Hz付近に共振点を有していることから,幼児の共振周波数は成人より大きくなった.これは幼児の質量や慣性モーメントが成人より小さいことが要因と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児‐ベビーカー系の測定実験において,モーションキャプチャーと幼児の加速度測定から,当初計画していた幼児の理論モデルを構築するための十分な測定データが取得できた.したがって,計画通りの実績を得ることができたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は二次元の動的挙動を再現可能な理論モデルを構築してきたが,進行方向に対して上下・前後運動だけでなく,左右方向の運動も小さくなく,乗り心地に寄与すると考えられるため,これを考慮した理論モデルを検討する必要がある. そこで,把握した動的挙動を過渡現象と共振現象を再現可能な理論モデルをラグランジュ方程式に基づき構築し,ルンゲクッタ・ジル法を用いて解析する.また,頸部,腰部等の関節部の特性のモデル化を検討する必要がある.そこで,成人の関節モデルを基に過渡現象における幼児の測定結果から改良を試み,幼児と成人の関節特性の違いを把握する. 理論モデルの妥当性を検証するため,加速度センサとモーションキャプチャから得た単一突起乗り越し時の頭部と胴体部の三次元の動きと突起乗り越しを再現した数値解析結果と比較する.これにより上下・前後・左右方向における頭部の運動や胴体部の撓りを含んだ運動が一致しているかどうかを検証する.さらに,理論モデルの自由度が理論解析結果へ及ぼす影響等を定量的に明らかにする.
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Causes of Carryover |
今後,追加実験を予定しており,追加でセンサ等と購入する予定である.また,2020年度に参加する予定の講演会の開催が未定となっており,執行計画に変更が生じる可能性がある.
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Research Products
(2 results)