2020 Fiscal Year Research-status Report
重力環境の違いに着目した消火設備・消火戦術の高度化に関する研究
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19K04925
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Research Institution | Hachinohe Institute of Technology |
Principal Investigator |
工藤 祐嗣 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80333714)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 微小重力燃焼 / 区画火災 / ゴースティング火炎 / 低酸素濃度での火炎維持 |
Outline of Annual Research Achievements |
密閉度が高く換気条件が悪い,低酸素濃度条件下で区画火災が生じた場合,区画内をランダムに動き回るゴースティング火炎が発生することがある.一方,火炎への空気流入速度が制限される低重力環境下では,可燃限界酸素濃度が低下することが報告されている.低重力環境下で見られる低酸素濃度条件での燃焼現象との類似点を明らかにするため,R2年度は小型区画を作成し,ゴースティング火炎の発生条件を明らかにする区画火災実験を行った. 実験装置として,耐火断熱材(イソライト社製イソウール)を加工し低換気条件の小型区画を製作した.寸法は内法が300mm×220mm×220mm,前壁面は開口部を設け,取り外し可能な扉とする。区画の外側には密閉度を上げるためにアルミ板を貼った.温度測定のため,区画中央部の底面から高さ方向50mmずつ熱電対を設置し,計6カ所を測定した.区画横壁面に酸素濃度センサを取り付け,時間変化による酸素濃度変化をリアルタイム測定する.実験用燃料としてはエタノールを用い,区画中央部に火皿を設置し,火皿への燃料供給量を電子天秤にて測定した. 開口部高さを変化させ複数の実験を実施したところ,開口部高さ80mmの時,ゴースティング火炎が現れた.開口部から火炎が噴出する噴出火炎に移行する直前の,実験開始後105秒から115秒付近で,全ての熱電対による温度が顕著に低下している.また酸素濃度も低下し続けている最中である.この間にゴースティング火炎が発生していた.ゴースティング火炎は,本実験では床面から100mmの位置の温度501℃,酸素濃度3.51%で発生した.通常,このような低い酸素濃度で火炎は維持できないが,区画内の温度が高く,火炎との温度差が小さくなり,浮力流れの速度が低下することで,開口部から流入した酸素と燃料蒸気の境界面で火炎が維持できるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度は予定していたゴースティング火炎の発生条件の明確化のため,小型区画火災実験装置の作成および区画火災実験を実施した.通常の燃焼では,酸素濃度18%以下で燃焼を維持することはできないが,断熱性の高い区画火災においては,開口部を極端に小さくし,換気を制限した状態での火災であっても,条件次第では低い酸素濃度で燃焼を維持するゴースティング火炎が発生することを確認した.また,ゴースティング火炎の発生条件として,温度が500℃程度と比較的高い状態であることも確認した.このような周囲温度が高い条件下では,火炎からの失熱が少なく低酸素濃度条件下であっても燃焼を維持できる.また,火炎と周囲との温度差が小さいことで,浮力流れの流れ速度は小さくなり,低酸素濃度条件下で化学反応速度が低下しても,移流速度も同時に低下するため,ダムケラー数を考えれば消炎条件には至らず,火炎を維持できるものと推察される.このようなゴースティング火炎の発生条件を明らかにすることが本年度の目標であり,これを概ね把握することができた.よって本研究は順調に進展しているものと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は,小型区画火災実験を継続して実施し,ゴースティング火炎発生条件のより明確化を図る.複数の実験を実施したが,ゴースティング火炎が発生した実験は多くなく,再現性に疑問があること,また,実験パラメータの範囲が狭いこともあり,より広範な条件での実験が求められることから,引き続き小型区画火災実験を実施することを検討している.追加した実験の結果,ゴースティング火炎発生条件が明確となれば,低重力環境下での燃え拡がり実験における低酸素濃度環境下で見られた火炎維持条件との対比を行い,区画火災におけるゴースティング火炎維持機構の解明とLOL(Low Oxygen Limit)の明確化に関する検討を行うことを予定している.
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Causes of Carryover |
日本火災学会研究発表会での成果発表を実施したが,新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止となり,研究発表会概要集の発行をもって発表に替えることとなったため,旅費を使用することがなかった.また,実験装置の作成に必要な断熱材,測定装置を作成するための3Dプリンタ用フィラメントなどを実験消耗品として購入したが,当初見積もりより少量で済んだため,申請時の使用予定額と比較して少額で済み,次年度使用予定額が発生した.R2年度はトラブルによりうまく燃料使用量を測定できなかったため,小型区画火災実験装置への燃料供給装置の改良が必要であり,これをR3年度実施するため,次年度使用額を使用する予定である.
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Research Products
(1 results)